土地と建物を同時に売却する場合、譲渡所得の計算は一見複雑に見えます。売却金額・取得費・減価償却・諸費用などが関わるため、適切な知識がないと税金面で損をしてしまう可能性も。本記事では、土地建物の譲渡所得の計算に関する正しい手順と注意点を、具体例を交えながら解説します。
譲渡所得とは?まずは基本を押さえよう
譲渡所得とは、資産を売却したことにより得られる利益(または損失)のことを指します。不動産の譲渡所得は以下の式で求められます。
譲渡所得 = 譲渡価格 −(取得費+譲渡費用)
譲渡価格は売却金額、取得費は購入時の金額と減価償却費の差額、譲渡費用は仲介手数料・登記費用などが該当します。
土地と建物は別々に計算するのが原則
税務上、土地と建物はそれぞれ独立した資産として扱われるため、譲渡所得も別々に計算します。建物は減価償却の対象であるため、建物の取得費は購入額から経年による償却額を差し引いて算出します。
例えば建物を1,100万円で取得し、築年数に応じて減価償却後の額が600万円になった場合、その金額が取得費となります。
譲渡価格の配分に要注意:契約書記載が重要
売却価格が1,450万円(土地850万+建物600万)であっても、契約書上に土地と建物の金額がどう記載されているかによって、税務計算上の比率が決まります。これにより、建物部分の譲渡益に対して所得税・住民税が課されることになります。
実際に、建物部分で赤字、土地で黒字といったケースがあっても、それぞれの譲渡所得を合算して税額を算出します。
減価償却の計算方法
減価償却は建物の構造や用途に応じて耐用年数と償却率が異なります。住宅用建物の例。
- 木造:耐用年数22年(定額法なら償却率0.046)
- 鉄筋コンクリート造:耐用年数47年(償却率0.022)
例として、築20年の木造住宅を1,100万円で購入した場合、年間の償却費は約50万円で、総償却額は約1,000万円、残存価値は100万円程度になることも。
譲渡費用に含められる代表的な経費
譲渡所得の計算時に「譲渡費用」として控除できる費用には以下のようなものがあります。
- 不動産会社への仲介手数料
- 契約書に貼る印紙代
- 売買にかかる司法書士報酬
- 建物解体費(更地渡しの場合)
これらを漏れなく計上することで、譲渡益を圧縮し課税額を抑えることが可能です。
税率と申告のタイミング
不動産譲渡の所得税は、所有期間に応じて以下のように変わります。
- 短期譲渡(5年以下):税率39.63%(所得税+住民税)
- 長期譲渡(5年超):税率20.315%
売却の翌年の確定申告時に、譲渡所得を申告する義務があります。長期所有の場合でも課税対象になるケースが多いため、試算と準備が必要です。
まとめ:契約内容と計算方法をしっかり確認
土地建物の売却に伴う譲渡所得の計算では、「土地と建物を分けて計算する」「減価償却を適用する」「契約書記載の金額を税務に活かす」など、注意点が多くあります。
契約書の内容に違和感がある場合や税金の負担が気になる場合は、税理士や税務署への早めの相談が重要です。
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