死亡保険金の受取人が同時に亡くなった場合はどうなる?相続と遺言の複雑な関係を解説

生命保険

死亡保険金の受取人や相続人が同時に死亡した場合、誰が保険金を受け取るのか、遺言書がある場合とない場合でどう変わるのか——。一見シンプルに見える保険の受取制度ですが、実際には民法や保険法に基づいた複雑なルールが存在します。この記事では、万が一のときに困らないよう、受取人や相続の基本と、同時死亡に関する法律的な取扱いについて具体例を交えて解説します。

死亡保険金とは「受取人指定」が絶対

まず押さえておきたいのは、死亡保険金は原則として「契約者が指定した受取人」に支払われるということです。これは遺産とは異なり、保険契約に基づいた“契約上の権利”として扱われます。

そのため、Aさんが契約者・被保険者で、受取人をBさんと指定していた場合、Aさんが死亡すると、死亡保険金はBさんの財産となります。

受取人と被保険者が同時に亡くなった場合の扱い

このケースでは「同時死亡の推定規定」(民法第32条の2)が適用されます。同時に死亡したとされる場合、両者は相互に相続しないことになります。つまり、BさんがAさんの死亡保険金を受け取ることはできません。

この場合、保険金は「次順位の受取人」に支払われることになります。もし次順位が指定されていなければ、死亡保険金はAさんの相続財産となり、Aさんの法定相続人に分配されます。

Bさんに遺言がある場合、Cさんは受け取れる?

仮にBさんが「自分の財産をCさんに渡す」という遺言を残していたとしても、Bさんが保険金を受け取る前に亡くなっていた場合、その権利は発生しません。つまり、保険金はBさんの財産にならず、当然Cさんに渡ることもないのです。

受取人の権利は“生存していた場合に限り”発生するため、同時死亡ではBさんの受取権は成立せず、遺言も効力を持ちません。

A・B・C全員が同時に亡くなった場合

Aさん、Bさん、Cさん全員が同時に死亡した場合、やはり受取人Bさんが受け取ることはできず、さらにCさんも何も受け取る立場にないため、保険金はAさんの相続財産として扱われます。

この場合、最終的にAさんの法定相続人(例:配偶者、子ども、両親など)に保険金が支払われることになります。Aさんが遺言書を残していなければ、民法に基づく通常の相続ルールが適用されます。

「次順位受取人」を設定することでトラブル防止

このような万が一の事態に備えるために有効なのが、「次順位受取人」の設定です。これは、第一受取人が保険金を受け取れなかった場合に備えて、次の受取人をあらかじめ保険契約で指定しておくものです。

たとえば、Aさんが第一受取人をBさん、第二受取人をCさんと設定しておけば、Bさんが死亡していても、Cさんが保険金を受け取れる可能性があります。保険会社によってはこの設定が可能なので、事前の確認が重要です。

まとめ|複数人が亡くなる可能性も想定して準備を

死亡保険金は、契約時の受取人設定によって運命が大きく左右されます。同時死亡のような不測の事態にも対応できるよう、「次順位受取人」の指定や、相続と遺言の整理はとても重要です。

特に家族間で財産の意思を明確にしておくことが、残された人のトラブルを防ぐ最善策になります。今一度、自分の保険契約と遺言の内容を見直してみましょう。

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