仮想個人勘定残高を一時金で受け取る場合の税金と退職金控除の扱いとは?

税金、年金

退職後に届く「仮想個人勘定残高」の案内を受け取り、一時金としての受け取りを検討する方も多いでしょう。特に60歳を迎えるタイミングで、薬業年金基金などから受け取る一時金について、退職金控除の適用や課税方法をしっかり理解しておくことは、税負担を抑えるためにも重要です。

仮想個人勘定残高とは何か

企業年金や厚生年金基金が解散または移行した場合に、加入者に対して積み立てられていた退職金相当額を示したもので、主に薬業年金基金や電機年金基金などに見られます。この仮想個人勘定残高は、将来の給付の根拠にもなり、定年や一定年齢到達時に年金または一時金として受け取る選択肢が提示されます。

今回のように「一時金として受け取る」場合、その金額は退職所得とみなされる可能性があり、退職所得控除を受けられることが多いです。

退職所得控除の仕組み

退職所得として扱われる場合、次のように控除と税額が計算されます。

  • 退職所得控除額=40万円×勤続年数(20年超は1年につき70万円)
  • 課税退職所得=(受取額−退職所得控除)×1/2

たとえば、23年勤務で一時金が200万円の場合、退職所得控除は800万円(20年×40万円+3年×70万円)となるため、全額が非課税になります。

つまり、他の給与と合算して所得税がかかることは基本的にありません

雑所得扱いになるケースもある

ただし、受取方法や制度の設計によっては、雑所得として課税される場合もあります。これは基金によって異なるため、案内書類に「退職所得」「一時金」「雑所得」などの記載があるかを必ず確認してください。

雑所得扱いとなった場合、給与と合算されて所得税・住民税が発生し、また社会保険料にも影響が出ることがあります。

健康保険料への影響は?

国民健康保険加入者や被用者保険の扶養を外れている場合、前年の所得に応じて保険料が決まるため、課税所得が急増すると翌年の保険料が高額になる可能性があります。

しかし、退職所得は「他の所得と分離課税」であるため、健康保険料算定に含まれない自治体もあります。詳細は、お住まいの自治体の保険課に確認しましょう。

受け取りの前に準備しておきたいこと

一時金を受け取る前に確認・準備したいことは以下の通りです。

  • 案内書類に記載のある所得区分(退職所得か雑所得か)を確認
  • 税務署か税理士に具体的な税額計算を依頼
  • 源泉徴収の有無や金額をチェック
  • 健康保険料への影響を自治体へ確認

制度や所得区分によって扱いが大きく異なるため、不明点は必ず専門家に相談することをおすすめします。

実例:退職後10年経過で一時金を受け取ったBさんのケース

Bさんは製薬会社勤務で23年勤め上げた後、55歳で退職。その後別の会社で勤務を続けていましたが、60歳を迎えた年に薬業年金基金から仮想個人勘定残高210万円の一時金を受け取りました。

案内には「退職所得」と明記されており、勤続年数に応じた退職所得控除により非課税で処理されました。結果、他の所得と合算されず、社会保険料にも影響はありませんでした。

まとめ:仮想個人勘定残高の一時金は基本的に退職所得控除の対象になる

仮想個人勘定残高の一時金受け取りは、多くの場合で退職所得扱いとなり、退職所得控除が適用されるため非課税になる可能性が高いです。ただし、雑所得扱いの場合は注意が必要で、税金や保険料への影響が出ることもあるため、案内文書の確認と専門家への相談がカギとなります。

税負担を最小限に抑えるためにも、受取前にしっかり準備し、制度の仕組みを正しく理解しておきましょう。

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