年金の繰上げ受給を開始した後でも、仕事を続けていて厚生年金に加入している場合、「支給額は将来的に増えるのか?」という疑問を持つ方は少なくありません。今回は、繰上げ受給中の就労と厚生年金保険料の関係、そして年金支給額への影響について詳しく解説します。
繰上げ受給とは?支給開始を早める制度
年金の繰上げ受給とは、原則65歳から支給される老齢基礎年金・老齢厚生年金を60~64歳の間で早めに受け取る制度です。繰上げる月数に応じて年金額が減額され、一生その金額が続く仕組みです。
例えば、60歳で5年間繰上げた場合、約24%(2023年度時点)の減額率が適用されます。これは固定され、後に仕事をして厚生年金に加入しても、この減額は変わりません。
厚生年金に加入し続けると「在職老齢年金」の仕組みが適用される
繰上げ受給後も会社などで働き続け、厚生年金に加入していると「在職老齢年金」の対象になる場合があります。これは、給与と年金の合計が一定以上になると、年金の一部または全部が停止される制度です。
ただし、60歳台前半の在職老齢年金制度は、月収+年金の合計が28万円超になると調整対象となり、年金が支給停止となることもあります。注意が必要です。
働きながら納めた保険料は「年金額の増額」に反映される
たとえ繰上げ受給中でも、厚生年金に加入して保険料を納めている場合、その期間は「在職中の加算」として後から年金額に反映される仕組みになっています。
これは「在職定時改定」と呼ばれ、2022年4月から制度改正により、在職中でも年金額が年1回(10月支給分)で自動的に改定されるようになりました。たとえば、60歳以降に就労しながら納付した保険料に応じて、年金額が少しずつ上乗せされていきます。
将来的に支給額が増える具体的なケース
具体例として、62歳で繰上げ受給を開始し、引き続き正社員として働きながら厚生年金に加入しているAさんの場合。毎年10月に支給額が再計算され、働いた分の報酬に応じて年間数千円~1万円前後の増額がされていく可能性があります。
ただし、元々の繰上げによる減額分が大きいため、それを完全に補うのは難しいですが、長く働き続けることでその差を縮めることは可能です。
注意すべき点:年金額が減額される要因も
在職老齢年金制度の調整により、一定の収入を超えると支給停止される可能性があります。これは決して「年金が減る」わけではなく、支給が一時的に停止されているだけで、記録としては反映されています。
また、繰上げ受給を開始すると、障害年金や遺族年金など他の給付に影響が出る場合もあるため、総合的に確認することが重要です。
まとめ:繰上げ受給後も厚生年金に加入し続ければ年金は増える
繰上げ受給を選んだ後でも、働きながら厚生年金に加入していれば、その後の納付分に応じて年金額は年1回加算される制度があります。将来的に少しずつ年金額は増えていきますが、繰上げによる減額は恒久的に残ることも理解しておきましょう。
年金制度は複雑ですが、納付すればきちんと将来に反映される仕組みです。長期的な視点で、自分にとって最適な働き方と受給のタイミングを考えていくことが大切です。
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