夫婦間で収入を計上せず税金を未納にし、名義も一方に集中させていた場合、法的な責任はどうなるのでしょうか。特に離婚時に資産の保有状況や名義が問題視されることがあり、税務署からの追及を受ける可能性もあります。本記事では、税務調査の実態や名義と実態の不一致がもたらすリスクについて詳しく解説します。
税務上の「名義」と「実質」の違いとは?
税法上では、取引や資産の実質的な所有者が誰かが重要視されます。つまり、通帳や取引名義が夫であっても、収益の源泉が妻の業務によるものであれば、妻に所得があるとみなされる可能性があるのです。
このような場合、たとえ名義人が税務申告していなくても、税務署は取引履歴や資金移動を元に実態を把握し、無申告加算税や延滞税、場合によっては重加算税(最大40%)を課すこともあります。
夫婦間での所得隠しはなぜバレる?
一見気づかれにくそうな収入隠しでも、次のようなきっかけで発覚することがあります。
- 不動産購入や高額な預金の存在が金融機関や不動産登記から発覚
- 家計調査・税務調査・マイナンバー連携から実態を把握
- 第三者(元配偶者・親族・知人)からの情報提供
特に最近では、AIによる資産監視や銀行口座とマイナンバーの紐付けにより、所得の不整合が可視化されやすくなってきています。
離婚と財産分与のタイミングで問題が浮上する可能性
離婚に際して資産分与を巡る争いが起こると、その過程で金融資産や不動産の名義、過去の収入状況が精査されます。その結果、隠していた所得や脱税行為が顕在化するリスクがあります。
例えば、妻の収入が夫名義の口座に入り、夫名義で資産を保有していた場合、離婚後に財産分与を求められたり、税務署から追及を受ける可能性があります。
実際の追徴課税の事例とその根拠
国税庁が公表する事例には、名義預金や仮装名義による所得隠しが原因で追徴を受けたケースが多数掲載されています。典型例は以下の通りです。
- 主婦のネットビジネス収入を夫名義口座で管理していた→妻に約200万円の追徴課税
- 名義人と実質所有者が異なる定期預金に相続税の過少申告→重加算税と延滞税が課税
根拠は「所得税法第36条(実質所得者課税の原則)」および「国税通則法第68条(重加算税)」にあります。
しかるべき機関への通報で動く可能性はある?
税務署は「情報提供窓口」や「国税庁ホットライン」で脱税情報を匿名で受け付けており、提供された情報に基づいて調査が始まるケースもあります。情報が具体的で信頼性が高ければ、優先的に調査対象になることも。
たとえば、振込記録・預金明細・メールやSNSでのやりとりなど、証拠性の高い資料があれば調査に進展しやすくなります。
まとめ:脱税と名義のズレは重大な法的リスクを伴う
たとえ配偶者同士の中であっても、収入の計上や資産の実質保有者を偽って税務申告を怠ることは、重大な脱税行為とみなされる可能性があります。特に離婚などで名義と実態の不一致が明らかになった場合、過去数年分の追徴課税や延滞税、悪質な場合には刑事罰(罰金・懲役)まで科されるリスクもあります。
脱税は時効(5年または重加算で7年)もあり、後から発覚しても逃れられない可能性があるため、早期に専門家に相談し是正措置を取ることが肝要です。
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