老齢厚生年金の繰下げ受給は何歳まで可能?82歳申請時の受給範囲と注意点を解説

年金

老齢厚生年金の繰下げ受給制度は、公的年金制度の柔軟性のひとつであり、より高い年金額を得たい方にとって魅力的な選択肢となります。しかし、高齢になってから申請する場合、「過去分がどこまでさかのぼって受け取れるのか」という点は、制度を正しく理解していないと損をする可能性があります。この記事では、82歳で繰下げ受給を申請したケースを例に、支給開始時期や受給可能な範囲について詳しく解説します。

老齢厚生年金の繰下げ受給とは

老齢厚生年金は原則65歳から受け取ることができますが、受給開始を遅らせる「繰下げ受給」を選択することで、1ヶ月ごとに0.7%、最大で84%(70歳まで)増額する仕組みです。2022年4月以降は75歳まで繰下げが可能となりました。

例えば65歳から受け取るはずの年金を75歳まで繰り下げると、月額は42%増額される計算になります。この制度は、高齢になってからでも申請することができます。

82歳で繰下げ受給を申請した場合の取り扱い

年金は、請求しない限り支給されません。仮に82歳で繰下げ受給の申請をしたとしても、制度上は「最大で75歳までしか繰下げできない」ことになっており、それ以降の増額は行われません。

そのため82歳で申請した場合、実務上は「75歳で請求されたもの」とみなされることになります。つまり、75歳時点での年金額に42%の繰下げ増額が加算された形で、82歳以降に支給が開始されることになります。

5年の支分権により受給できるのは過去5年分まで

年金には「支分権(しぶんけん)」という時効の概念があり、過去5年を超える分は原則として受け取ることができません。したがって、仮に繰下げ受給の申請を82歳に行った場合、75歳から77歳の2年間は支分権により失効してしまい、77歳から82歳までの5年分のみが一括で支給されることになります。

実際の支給額としては、75歳で増額された年金額をもとに、過去5年分(77〜82歳)の合計が遡って支払われるという形です。

繰下げのメリットと注意点

繰下げ受給には、長生きすればするほど得になるというメリットがありますが、一方で以下の注意点もあります。

  • 申請が遅れると支分権により一部の年金を失う
  • 医療費・介護費などが増える時期と重なる可能性
  • 家計の見通しが立てづらくなる

たとえば、80歳を超えてから申請する場合は、過去分の受給制限を受けることを理解し、早めの判断が求められます。

年金の繰下げを検討する際の相談先

年金に関する手続きや受給シミュレーションを行いたい場合は、年金事務所または街角の年金相談センターでの相談が有効です。事前に「ねんきんネット」でご自身の年金見込額を確認しておくと、より具体的なアドバイスが受けられます。

また、将来的な生活設計を含めて検討したい方は、ファイナンシャルプランナー(CFPやAFPなど)への相談もおすすめです。

まとめ:繰下げは戦略的に、時効には要注意

老齢厚生年金を82歳で申請した場合、最大でも75歳までの繰下げとして扱われ、実際に受け取れるのは申請日からさかのぼって5年間(77〜82歳分)のみです。繰下げのメリットを最大限に活かすには、75歳までに受給開始の申請を行うのが鉄則です。老後の年金戦略は、制度の正確な理解と早めの行動が成功の鍵となります。

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