火災や自然災害などで損害を受けた家財の修理・買い替えに際して、火災保険を活用する方は多いですが、「見積もりと実際の購入価格に差があった場合、その差額をどう扱うか」は意外と知られていません。とくに「定価見積もりで保険金をもらって、実際はもっと安く購入した」場合、その差額を懐に入れると法律的に問題があるのか?この記事ではその点を保険の仕組みと法律的視点から解説します。
火災保険は「実損補填」が原則
火災保険の基本原則は「実損填補」、つまり実際にかかった損害を補うものです。保険契約者が得をすることは目的ではなく、損害の回復に必要な分だけが支払われる設計になっています。
たとえば、50万円の家具が燃えたとして、保険会社に提出した見積もりが「定価ベース」で50万円であれば、保険金もその額を基準に支払われる可能性があります。しかし、実際に35万円で購入して残りの15万円を手元に残した場合、「利益目的」とみなされる可能性が出てきます。
定価と実際の購入額が異なる場合の考え方
仮に見積書の段階で保険会社の承諾を得ていたとしても、その後の購入金額が大幅に安かった場合、保険会社が後から確認し、差額の返還や追加調査を求めることは十分にあり得ます。
とくに家具や家電などは市場価格の変動が激しく、定価ベースの見積もりと実際の支払い額に差が出るのはよくある話ですが、「あえて高い見積もりを出して差額を得ようとした」場合は、意図的な不正と見なされる可能性もあります。
差額を得る行為は詐欺になるのか?
差額を得るだけでは直ちに「詐欺」とは限りません。しかし、以下のような場合には、刑事的責任が問われるおそれがあります。
- 明らかに相場を逸脱した高額見積もりを使って保険金を得た
- 業者と共謀して水増し見積もりを作成した
- 保険会社に「実際は定価で購入する」と虚偽の申告をした
つまり、「差額が出た」こと自体よりも、「その過程に故意や虚偽があるか」が重要です。逆に、業者が勝手に安く販売してきた場合や、後でセール品に変わったなどは該当しない可能性が高いです。
業者からの「差額キックバック」はリスクが高い
業者側から「保険金で50万円もらえるなら、35万円で納品して15万円は現金でお渡しします」などの提案があった場合、それに応じると業者と保険契約者の双方が詐欺に問われるリスクがあります。
これは「保険金の不正請求」にあたる可能性があり、保険会社が発覚した場合は契約の解除、保険金の返還請求、刑事告発にまで発展するケースもあります。特に書面や証拠が残ると、保険会社の調査で発覚しやすくなります。
正しく保険金を受け取るためのポイント
- 実際にかかった金額に基づいた領収書や請求書を残す
- 見積もり時に「おおよその金額である」ことを申告する
- 購入金額が変動した場合は保険会社に一報入れる
- 業者と不自然な口裏合わせをしない
特に、自己判断で「差額をもらっても大丈夫」と思い込んで行動するのは危険です。少しでも不安がある場合は、保険会社や保険代理店に確認を取りましょう。
まとめ:差額を得る行為は注意が必要。誤魔化しは不正とみなされることも
火災保険を活用して損害の補填を受ける際、見積もりと実際の購入額に差が出ること自体はよくあることです。ただし、意図的に差額を狙ったり、業者と共謀して金銭のやり取りをした場合は、不正請求や詐欺と判断される可能性があります。
正しい手続きと誠実な対応を心がけ、信頼を損なわずに補償を受けることが最善策です。
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