「日本人の平均貯蓄額は○○万円」といった統計を目にする機会がありますが、その数字を信じてよいのか疑問に思ったことはありませんか?この記事では、平均値と中央値の違いや、なぜ平均値が現実を正しく反映しづらいのか、統計の基本から詳しく解説していきます。
平均値と中央値の違いとは?
平均値とは、すべての値を合計して人数で割った数値です。一方、中央値は「全体を小さい順に並べたときに真ん中にくる数値」を指します。
例えば、ある5人の貯蓄額が以下の通りだとします。
- 100万円
- 120万円
- 150万円
- 180万円
- 5,000万円
この場合、平均値は1,110万円、中央値は150万円となります。明らかに平均値が富裕層によって引き上げられていることが分かります。
なぜ中央値のほうが「実態に近い」のか?
日本のように所得・資産の格差が大きい社会では、一部の富裕層が統計全体を大きく引き上げてしまう傾向があります。これにより平均値は極端な数値になり、マス層(多数派)の日常感覚とはズレが生じます。
そのため、中央値は「多数派の実態」をより正確に表す指標として活用されるのです。特に生活設計や政策立案では、中央値が重視される傾向があります。
下位層が平均を「下げる」ことはないのか?
もちろん、100万円未満しか貯蓄がない層も一定数存在しており、その影響で平均値が下がる面もあります。しかし、統計的に見ると、上位1%の資産が全体の資産の20%以上を占めるというデータがあるほど、富裕層のインパクトは圧倒的です。
結果として、下位層の存在による「引き下げ効果」よりも、上位層の「引き上げ効果」のほうが遥かに強く作用します。
統計データは目的に応じて使い分けるのが正解
たとえば、金融機関が「平均貯蓄額」を根拠に商品を設計すれば、マス層には高額すぎる商品ができてしまいます。逆に、生活保護や年金制度を設計するなら、中央値を基準にすべきでしょう。
つまり、統計の「どの数値を使うべきか」は、何を知りたいのかによって変わるのです。
日本人の実際の貯蓄額の中央値と平均値
総務省「家計調査報告」(2023年)によると、二人以上世帯の平均貯蓄額は約1,850万円ですが、中央値は約1,100万円にとどまっています。この差からも、平均値が過大評価されやすいことがわかります。
独身世帯では平均が800万円前後、中央値は300〜400万円程度とされており、統計局の公式データでも明示されています。
まとめ:数字は鵜呑みにせず「構造」を理解しよう
貯蓄額の統計を見るとき、平均値だけを見るのではなく、中央値や分布のバランスも合わせて理解することが重要です。
一部の富裕層による数値のゆがみを補正するためにも、中央値は非常に有効な指標と言えるでしょう。数字の裏にある背景を知ることで、より現実に即したお金の判断ができるようになります。
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