基礎年金の底上げとは？将来の安心につながる制度改革の狙いと仕組みを解説

将来の年金に不安を感じる方が増えるなか、「基礎年金の底上げ」という言葉を目にしたことがあるかもしれません。年金制度の見直しが進む中で、生活保障機能の強化が注目されています。この記事では、「基礎年金の底上げ」の意味や背景、そしてどのような影響があるのかをわかりやすく解説します。

基礎年金の仕組みをおさらい

日本の年金制度は、「国民年金（基礎年金）」と「厚生年金」などの上乗せ部分に分かれています。国民年金は、20歳以上60歳未満の全国民が加入するもので、老後の最低限の生活保障を目的としています。

満額を受け取るには原則40年間保険料を納める必要があり、2024年度時点の満額は月額約66,250円（年約79.5万円）です。

「底上げ」とは、制度の最低保障水準を引き上げるという意味で使われます。つまり、基礎年金の給付額を増やし、すべての高齢者が一定の生活水準を確保できるようにする改革です。

特に、単身高齢者や低所得の年金生活者にとっては、日々の暮らしを支える大きな意味を持ちます。

背景には、高齢者の貧困リスクの増加や年金受給額の低下があります。非正規雇用の増加や未納・未加入者の存在により、将来的に「基礎年金しかもらえない」人が増える可能性が高まっています。

そうした中で「セーフティネット」としての役割を果たすため、基礎年金の底上げが求められているのです。

底上げの方法にはいくつかの案があります。たとえば、税金による財源補填を増やすことで、保険料だけではまかないきれない給付水準を確保する方法があります。

また、「最低保障年金」制度を導入し、一定の条件を満たす人には一定額以上を保障する案もあります。これにより、生活保護に頼らずに最低限の暮らしが可能になることが期待されています。

仮に月額5,000円の底上げが実施されたとすると、年金受給者の年間収入は6万円増えることになります。物価上昇や医療費負担を考慮すると、この金額の差は生活の質に大きく影響します。

例えば、ある単身女性Aさん（年金生活・持ち家あり）は、月の生活費がぎりぎりでしたが、年6万円の増額により、電気代や食品費に少し余裕が生まれたと語っています。

制度の底上げには当然ながら財源が必要です。国民の税負担や社会保険料の引き上げが議論になる中で、どこまで現実的に実施できるかは今後の政策決定に左右されます。

ただし、高齢者の貧困対策として社会全体の合意が進めば、何らかの形で底上げの流れは加速する可能性があります。

基礎年金の底上げは、年金制度全体の信頼回復と生活保障の強化を目的とした重要な施策です。まだ具体的な実施には至っていないものの、今後の議論に注目することが求められます。

老後の生活設計を考えるうえでも、年金制度の動向を知り、将来の備えに役立てていくことが大切です。