雇用延長で納める厚生年金保険料は本当に得か?65歳以降の保険料が年金額に反映される仕組みを解説

税金、年金

定年後も働き続ける人が増える中、65歳以降に納める厚生年金保険料が年金額にどう反映されるのか、不安を抱える方も多いのではないでしょうか。「払い損になるのでは?」「国が得をする仕組みでは?」という声もありますが、実際はどうなのでしょうか。本記事では、65歳以降の厚生年金の仕組みと増額の実態について、わかりやすく解説します。

65歳以降も厚生年金に加入する仕組み

厚生年金は原則として70歳まで加入義務があり、65歳以上でも会社員や公務員として雇用されていれば、保険料を納めることになります。

この場合、年金受給は65歳からスタートしますが、それとは別に、65歳以降に納めた厚生年金保険料は「在職中の保険料納付分」として年金に反映されます。これを「年金額の改定(在職老齢年金)」と呼び、年1回(通常は10月)に見直しが行われます。

保険料を納めた分はどう増額されるのか?

年金額の計算式に基づき、65歳以降に納めた保険料は1年間でおよそ0.5〜0.6万円(年額)の年金増額につながるとされています。月額にすると数百円〜1,000円程度の増額となるケースが一般的です。

たとえば、標準報酬月額28万円(19等級)で70歳まで5年間勤務し続けた場合の年金増額分は以下のようになります。

  • 1年の報酬比例部分:約0.006481×28万円×12カ月=約21,734円(年額)
  • 5年分の増額:21,734円×5年=108,670円(年額)
  • 月額増額:約9,000円

このように、保険料の総額(労使折半)に比べると見劣りする印象を受けますが、長生きすれば確実に元が取れる設計です。

「払い損」には本当にならないのか?

「払った保険料に対して受け取れる年金が少ないのでは?」という疑問はもっともです。たとえば、65歳〜70歳の5年間で労使合計の保険料を約330万円支払った場合、年金が年間10万円程度増えると仮定すると、約33年で元が取れる計算です。

つまり、83歳〜85歳頃まで生きるとトントン、それ以降は黒字になります。これは「長生きリスクに備える」という年金の目的と合致しています。

実際の事例と受給額の変化

たとえば東京都で雇用延長中のAさん(65歳時点で厚生年金受給開始)、70歳まで働いた場合。

  • 標準報酬月額:28万円
  • 5年間の納付総額(労使合計):約330万円
  • 年金増額見込み:年額約10万円(月額約8,300円)
  • 85歳までの受給増加額:約150万円(年額10万円×15年)

確かに単純な掛け金比較では「損」と感じるかもしれませんが、これは保険としての性質を考慮する必要があります。

まとめ

65歳以降に納めた厚生年金保険料は、確実に年金額に反映されます。ただし、反映は年1回の見直しによる少額ずつの増額であり、「すぐに高額な増額がある」わけではありません。平均余命まで生きた場合には払い損ではなく、むしろ確実に得をする仕組みです。長生きすればするほど有利になるこの制度は、老後の安心材料の一つとして活用すべきと言えるでしょう。

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