法人設立で社会保険料を安く抑えることは可能?役員報酬を下げる節約術の落とし穴

国民健康保険

退職後に国民健康保険の保険料を見て驚いた経験は多くの方に共通するものです。特に無職の期間が長引く場合、保険料の負担は大きな懸念材料となります。そこで注目されるのが「法人を設立して役員報酬を限りなく0円にすることで社会保険料を抑える」という節約術ですが、果たしてこの方法は合法なのでしょうか?本記事では、その実態と注意点についてわかりやすく解説します。

社会保険と国民健康保険の仕組みの違い

退職後に加入する「国民健康保険」は、前年の所得を基に計算されるため、収入がない状態でも保険料が高くなることがあります。一方、「社会保険(健康保険+厚生年金)」は、基本的に現在の報酬額をもとに計算される仕組みです。

この違いから、「報酬を低く設定すれば社会保険料も安くできるのでは?」という発想が生まれます。

役員報酬0円でも社会保険には加入義務がある?

法人の代表取締役などが役員報酬を0円に設定しても、会社が従業員1人でも雇っていれば強制的に社会保険に加入する必要があります。つまり、自身の報酬が0円でも、法人に所属することで社会保険への加入義務は生じる可能性が高いのです。

ただし、従業員が1人もいない1人法人(=代表取締役のみ)であれば、役員報酬0円とすることで社会保険への加入義務を免れることもあります。とはいえこれはグレーな立ち位置にあるため、ケースによっては当局の指導対象になることもあります。

社会保険料を下げる目的で報酬を意図的に低くするリスク

節税・節約の目的で役員報酬を不自然に0円または極端に低く設定した場合、税務署や年金事務所から「実態に即していない」として指摘を受けるリスクがあります。

たとえば、実際には生活できる程度の収入があるにもかかわらず、法人からの報酬を形式上ゼロにした場合には、実態と乖離した形式的なスキームと判断される可能性があり、後日追徴の対象になるケースもあります。

実例:法人化して保険料を抑えたケースとその注意点

ある30代の個人事業主が法人化して役員報酬を月3万円に設定したことで、社会保険料を大幅に抑えることができました。この方法により、年間で国民健康保険時代よりも20万円以上の節約につながったとのことです。

しかしこの方は税理士と綿密に相談し、報酬水準が業務実態と大きく乖離していないことを証明できる書類を常に用意していたため、合法的に運用できていた点が重要です。

違法性があるのか?法律との関係性

法人化や役員報酬設定そのものは合法ですが、「社会保険逃れ」を目的として制度を悪用する場合には、日本年金機構などの監査対象になるリスクがあります。

法人設立や報酬設定は自由ですが、その裏に意図的な保険料逃れがあると判断された場合、制度の趣旨に反して是正指導や追加徴収が発生することも否定できません。

法人設立のその他のコストと手間も忘れずに

法人を設立するには登録免許税、定款認証費用、税理士報酬、社会保険手続きなど様々な費用がかかります。また法人維持のためには毎年決算申告が必要であり、ランニングコストや時間的コストも見過ごせません。

社会保険料を抑えられるからといって、必ずしも得になるとは限らない点に注意が必要です。

まとめ:役員報酬を下げる法人設立は節約に有効だがリスクも

法人化して役員報酬を抑えることで社会保険料を節約することは、一定の条件下で合法的に可能です。しかし、その運用には法的リスクや制度上の注意点も伴います。

実際に導入を検討する場合は、税理士や社会保険労務士などの専門家に相談し、法令に則った運用を心がけることが安心・安全な選択と言えるでしょう。

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