近年、早期退職や病気による離職を機に、老後の生活資金について不安を抱える方が増えています。特に、収入が年金中心になる75歳以降の生活設計は、現役時代の延長線上では捉えきれない課題が伴います。本記事では、退職金・貯蓄・相続などまとまった資産がある状況で、どのように老後資金を安定させていくかを解説します。
退職後の収支バランスを把握する
まず前提として、収入と支出の「見える化」が重要です。たとえば、
- 退職金:3,200万円(税引後)
- 貯金:3,000万円
- 想定相続:7,000万円(税引後)
- 住宅ローン支出:月11万円(管理費含む)+年2回ボーナス払い
- 家族の収入:妻のパート8万円+息子の生活費6万円=月14万円
この構造から、年収入168万円に対して住宅ローン支出だけで年間132万円以上。生活費を加味すれば明らかに赤字になります。この赤字を資産でどれだけ補填するかがカギです。
老後資金の目安と長期戦略
総務省の家計調査(2023年)によれば、65歳以上の高齢夫婦無職世帯の平均支出は月約26万円で、年金収入との差額(月約5万円)が毎月の赤字となっています。
仮に月10万円の不足があると仮定すると、20年間で必要な資金は2,400万円。現在の貯金・退職金に加え、相続予定を考慮すれば「老後破綻」のリスクはかなり低いと言えます。
住宅ローンはどうすべきか?
最大の固定費である住宅ローンは、75歳完済予定の21年ローンが残っています。利息や残高、繰上返済可能性を再計算し、
- 繰上返済によって利息を減らす
- 低金利のうちに借り換えを検討する
- 相続資金で一部を返済し将来の負担を減らす
などの選択肢を視野に入れましょう。老後資金確保において、ローン管理は非常に重要です。
収入源の多角化:再就職が難しい場合の対策
年齢や健康状態から再就職が難しい場合でも、収入源の確保は可能です。
- 障害年金や手当の確認(国民年金・厚生年金で該当する等級)
- 投資信託や債券を用いた低リスク運用
- 不用品販売・スキルシェアなど副収入の模索
- ライフプランナーと相談した資産運用設計
たとえば、年利2%で資産5,000万円を運用すれば年間100万円の収入となり、月あたり約8万円の補填が期待できます。
相続資産の位置付けと計画的活用
親の介護・医療費を加味しつつも、相続予定資金を「老後資金」として準備できるのは大きなアドバンテージです。ただし、相続時精算課税制度や、遺産分割に備えた法的手続きも同時に検討しましょう。
税理士や相続専門のFPに相談することで、無駄な税負担を減らしつつ活用できる資金として明確化できます。
まとめ:不安は「備え」と「仕組み」で解消できる
退職後に資産があっても、「使い方」「守り方」「収入源の補填策」がなければ不安は続きます。現在のご状況であれば、慎重かつ計画的に資産を活用すれば老後資金は十分確保可能です。
必要であれば、日本FP協会などの無料相談窓口を利用し、今後の資産戦略を設計していきましょう。再就職も可能性がゼロではありません。焦らず、長期的視点で未来を築いていくことが大切です。
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