長期入院中に保険証の切り替えがあると、「費用負担がどうなるのか」「高額療養費制度はどう適用されるのか」といった不安が出てくるものです。特に収入が大きく変わるようなケースでは自己負担額にも差が出るため、事前に仕組みを知っておくことが重要です。
保険証が変わると医療費の上限も変わる
入院中に健康保険の加入者が切り替わると、それぞれの期間に対応する健康保険の条件で自己負担額が計算されます。たとえば、6月中は自身の健康保険(低所得者)、7月以降は配偶者の扶養(高所得者世帯)といった場合、月ごとに異なる負担上限が適用されます。
そのため、6月分は自己負担が軽く済んだとしても、7月分については高額療養費の上限が引き上げられ、大きく費用が変わる可能性があります。
高額療養費制度の月ごとの仕組み
高額療養費制度は「1か月(1日〜末日)」単位で適用され、月をまたぐ場合はそれぞれの月ごとに負担上限額が設定されます。たとえば6月と7月をまたぐ場合、それぞれの月ごとに高額療養費制度が適用されることになります。
具体的には、6月は住民税非課税世帯としての区分で上限が設定され、7月は扶養者の年収に応じた一般世帯(年収約1,160万円の「区分ア」など)としての上限が適用されます。
年収100万円以下と1000万円超の自己負担の違い
高額療養費の上限は以下のように異なります(70歳未満の場合の一例)。
- 住民税非課税世帯:月の自己負担上限額は約35,400円程度
- 年収約1,160万円超(区分ア):月の自己負担上限額は252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
つまり、同じ入院期間でも月をまたぐだけで10万円以上の差が出ることもあります。
保険証の切り替えは病院と保険者に事前連絡を
保険証の切り替えがある場合は、必ず病院に新旧の保険証を提示しましょう。また、新しい保険者にも「入院中に切り替えがあったこと」を申告することで、正確に保険請求処理が行われます。
なお、高額療養費制度を適用するには「限度額適用認定証」の取得・提示が必要です。切り替え後の保険でも、できる限り早く手続きを進めることが大切です。
実例:6/20〜7/14入院した場合の費用イメージ
たとえば1日あたりの医療費が25,000円(7割保険負担前の総額)と仮定し、6月は10日分、7月は14日分入院したとすると、以下のような自己負担になります。
- 6月(低所得):総医療費25万円 → 自己負担約35,400円
- 7月(高所得):総医療費35万円 → 自己負担約90,000〜120,000円(上限額次第)
このように、保険区分の違いが直接、請求額に反映されるため注意が必要です。
まとめ:月単位で費用計算されることに注意
入院中の保険証変更は、高額療養費制度の計算に大きく影響します。1か月単位で負担上限が変わるため、保険証が変わる月をまたいで入院した場合、それぞれの月での費用負担を見積もる必要があります。
費用を最小限に抑えるには、早めの「限度額適用認定証」の申請と病院への正確な保険情報の共有がカギとなります。入院前後で保険区分が変わる方は、事前に社会保険事務所や病院の医療事務に相談しておくと安心です。
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