老後の生活設計において年金の受給開始年齢は重要なテーマです。多くの人が「早くもらった方が得」「どうせ長生きしない」と考えがちですが、実際には「損得」は人それぞれ。この記事では、年金を60代前半で早くもらう場合と、65歳以降に繰り下げて受給する場合の違いや考え方を解説します。
年金の受給開始年齢は60歳〜75歳の間で選べる
公的年金は原則65歳から支給されますが、60歳から繰上げることも、75歳まで繰下げることも可能です。受給を早めれば金額は減り、遅らせれば増額されます。
たとえば、60歳から受給を開始すると年金額は約30%減額され、70歳まで繰り下げると約42%増額されます。繰上げ・繰下げは一生その金額が続くため、将来の生活設計と健康状態をよく考えて選ぶことが重要です。
「早くもらった方が得」は本当か?
確かに寿命が短い場合は、繰上げで早めに年金を受け取る方が有利です。しかし逆に、長生きすればするほど繰下げによる増額分が有利になります。
実際には、平均寿命より長く生きる人が年々増えており、90歳を超える人も珍しくありません。長生きリスクをカバーするという観点では、繰下げ受給のメリットは非常に大きいです。
年金を繰り上げると損をする?試算例で比較
以下は年金月額を10万円と仮定し、60歳から繰上げた場合と65歳から受給した場合の累計受給額の比較です。
年齢 | 60歳から受給 | 65歳から受給 |
---|---|---|
70歳 | 840万円 | 600万円 |
80歳 | 1,680万円 | 1,800万円 |
90歳 | 2,520万円 | 3,000万円 |
このように、80歳を超えると65歳開始の方が累計で得になります。
「健康状態」や「預貯金」も判断材料
損得だけで判断せず、「いつまで働けるか」「貯蓄は十分か」「健康で長生きできそうか」といった要素も大切です。
例えば持病があり長生きできる自信がない人や、すぐに生活費が必要な人は繰上げの選択も有効です。一方で、ゆとりある老後を見越すなら繰下げも現実的です。
「花畑を走るエルフ」ではなく現実を見据えた選択を
65歳以上で年金を受け取ろうとする人が楽観主義者ばかりとは限りません。むしろ現実的に長生きの可能性を見据えて、老後資金を安定させたいという堅実な判断とも言えます。
年金制度の目的は「長生きリスクの保険」です。損得だけでなく、自分の将来像をもとに最適な受給タイミングを考えることが大切です。
まとめ:年金の受給タイミングは「寿命予想」だけで決めない
「早くもらった方が得」と思われがちな年金ですが、必ずしもそうとは限りません。健康状態、資産状況、家族構成、そして老後の暮らし方によって、ベストな選択は人それぞれです。
人生100年時代を見据え、自分に合った戦略で年金を活用しましょう。
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