職場での事故や転倒によるケガ、特に歯の損傷などで歯科治療が必要になった場合は、健康保険ではなく「労災保険」が適用されるのが原則です。しかし、誤って健康保険証を提出してしまった場合でも、正しい手続きを踏めば修正が可能です。本記事ではその対応方法や申請フローについてわかりやすく解説します。
労災保険と健康保険の違いとは?
労災保険とは、業務中や通勤中のケガ・病気に対して補償を行う制度です。一方、健康保険は私的なケガや病気が対象となるため、業務上の事故で治療する際に健康保険を使うのは原則として不適切とされています。
歯を折るなどの重大なケガも労災対象となり、自己負担ゼロで治療を受けられる場合が多いのが特徴です。
うっかり健康保険証を出してしまったときの対応方法
まずは、治療を受けた歯科医院に対して事情を説明し、健康保険で処理された分をいったん取り消してもらう必要があります。この処理は「健康保険の取り下げ」となり、医院側で対応可能です。
次に、労災申請用の書類「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」を勤務先を通じて用意し、医院に提出することで、労災として再請求することができます。
必要な手続きと書類の流れ
- 歯科医院に健康保険で処理されたことを伝え、労災に切り替えたい旨を相談
- 勤務先に労災申請の意向を伝える
- 労災申請書(様式第5号)を入手し、医院に記入してもらう
- 勤務先の担当者が所轄の労働基準監督署へ提出
この際、すでに健康保険で一部自己負担金を支払っていた場合、その分は後日払い戻しされる可能性があります。
職場や歯科医院との連携が重要
労災申請をスムーズに進めるためには、職場の総務・人事担当と連携することが不可欠です。申請書類には事業主の記名・押印が必要であり、勝手に個人で申請することはできません。
また、労災に不慣れな歯科医院も存在するため、労災治療に対応しているかどうかも事前に確認しておくとよいでしょう。
実例:労災申請で保険証誤提出を取り下げたケース
ある会社員のAさんは、業務中に転倒して前歯を折ってしまいました。通院先で健康保険証を提示して診療を受けましたが、後日労災であることが判明。医院に相談し、健康保険処理を取り消してもらい、勤務先と連携して様式第5号で労災申請を行いました。
その結果、労災が適用され、既に支払っていた3割負担分も戻ってきました。このように、冷静に対応すれば修正が可能です。
まとめ:誤って保険証を出しても慌てず対応を
職場でのケガによる歯の損傷などは、労災保険の対象です。誤って健康保険証を提出してしまった場合でも、歯科医院と職場に相談すれば修正が可能です。手順に沿って対応すれば、適正な補償を受けることができます。
大切なのは、早めに行動し、関係機関と連携をとること。不安な場合は、労働基準監督署や社会保険労務士に相談するのもおすすめです。
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