退職後に健康保険の切り替えを失念していた場合、あとから高額な医療費の請求が届くケースがあります。これはいわゆる「無資格受診」と呼ばれる状況で、加入手続き前に医療機関を受診した場合に発生します。今回は、令和6年12月に退職し、令和7年5月にようやく国民健康保険に加入したケースを例に、無資格受診の扱いや支払い義務、取りうる対処法について詳しく解説します。
無資格受診とは?社保脱退後の空白期間のリスク
「無資格受診」とは、保険証を所持していない状態で医療機関を利用することを指します。通常、健康保険に加入していれば3割負担で済む医療費が、無資格受診の場合は一時的に全額(10割)請求されます。
例えば、令和6年12月に退職して社会保険を喪失したあと、国民健康保険への切り替えを令和7年5月までしていなかった場合、その間(例:12月~翌2月)の受診は無資格受診とみなされ、7割分があとから請求される可能性があります。
国保はさかのぼって加入できるが注意点も
国民健康保険は、原則として退職日までに手続きをすればさかのぼって加入できます。多くの自治体では、保険料を納付すれば、遡及分の資格が認められ、保険証が発行されます。
しかし重要なのは、さかのぼりの資格は即時に医療機関へ反映されるわけではないという点です。医療機関ではその時点で保険証の提示がないと、無資格扱いになるため、あとから7割分の請求が来てしまうことがあります。
医療費7割分の請求は本当に払う必要があるのか?
原則として、保険証を提示せずに医療機関を利用した場合、医療費は全額自己負担となります。ただし、以下の手続きを行えば、支払った全額のうち7割分をあとから返還してもらえる可能性があります。
- 自治体に「療養費支給申請」を提出する
- 医療機関から診療報酬明細書(レセプト)を取り寄せる
- 受診当時の保険資格証明書(遡及で取得)を提出
この手続きを経て認められれば、自己負担額は通常の3割に収まります。
療養費支給申請の手順と注意点
療養費支給申請は、医療費を一度全額支払った後に申請する方式です。申請には以下の書類が必要です。
- 診療報酬明細書(医療機関に依頼)
- 領収書
- 被保険者証(遡及分)
- 身分証明書
申請先はお住まいの自治体(市区町村役所)で、返還までに2~3か月かかることもあります。
今後トラブルを防ぐために|早めの切り替えと確認を
健康保険の切り替えは退職後14日以内に行うのが原則です。退職日からの空白期間が長くなると、無資格受診のリスクが高まります。
保険証の提示を求められなくても、必ず自分から申し出る習慣をつけましょう。保険の切り替えを後回しにすると、あとで高額な請求が届く可能性があります。
まとめ:保険の切り替え忘れは後からでも対処可能
退職後の医療費請求に驚いた方でも、国保に遡って加入し、適切に療養費支給申請を行えば、全額支払いは避けられるケースが多いです。あきらめずに自治体窓口で相談し、必要な手続きを行いましょう。今後は退職日と保険の切り替えをセットで管理する意識が大切です。
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