終身保険は、万一のときの死亡保障と将来的な貯蓄の両方の性質をあわせ持つ保険として人気があります。しかし、加入後すぐに解約すると「解約返戻金が支払った保険料より少ない」という現象がよく見られます。この仕組みに疑問を抱く方も多いかもしれません。この記事では、終身保険の保障と貯蓄の構造、元本割れが起こる理由について丁寧に解説していきます。
終身保険の基本構造をおさらい
終身保険は、その名の通り一生涯にわたる死亡保障があるのが特徴です。さらに、途中で解約することで「解約返戻金」を受け取れる貯蓄機能も備えています。この2つの機能を持つため、保険料の一部は保障に、もう一部は貯蓄に回されています。
例えば、月1万円の保険料を10年間支払ったとします。合計で120万円支払ったことになりますが、保険会社はそのうち数割を保障の原資として使っているため、解約時点では全額が戻るわけではありません。
なぜ早期解約すると元本割れするのか
終身保険は長期運用を前提とした商品です。初期の数年は、保険会社のコスト(契約手数料や営業経費など)が多くかかるため、解約返戻金が大きく目減りする設計になっています。
早期解約=損という印象を持たれがちですが、これは保険の「保障を受けていた」期間の対価と考えることが重要です。たとえば、入院給付や死亡時の保障を契約当初から受けられる点を加味すると、単なる積立商品とは考え方が異なります。
保障と貯蓄のバランスを知ろう
終身保険には主契約の死亡保障に加え、医療保障やがん特約などがオプションで付加できる場合があります。これにより、入院日額や通院補償が受けられるため、万一のときの金銭的負担を軽減する役割も果たします。
ただし、特約を多くつければつけるほど、返戻金として蓄積されるお金は減る傾向にあります。保障を厚くするのか、貯蓄性を重視するのか、目的に応じた設計が求められます。
具体的な返戻金の推移を例で確認
例として、30歳男性が月額1万円の終身保険に加入した場合、以下のような返戻金の推移になるケースがあります。
経過年数 | 支払総額 | 解約返戻金 | 返戻率 |
---|---|---|---|
5年 | 60万円 | 30万円 | 50% |
10年 | 120万円 | 90万円 | 75% |
20年 | 240万円 | 260万円 | 108% |
このように、長期間継続することで元本を上回る返戻金が得られる場合もあります。早期解約の「損」は、あくまで長期前提の商品の途中で手放すことに起因しています。
保険と投資は目的が違う
よく誤解されるのが、終身保険を投資や預金商品と同列で捉えるケースです。保険は「万が一に備える」保障商品であり、主眼はそこにあります。
投資信託や定期預金は元本の保全や増加を目的としていますが、終身保険は「もしもの時に家族を守るための準備」と「長期的な資産形成」を兼ねた性質です。ですから、返戻金だけを比較するのではなく、保障価値も含めて判断することが大切です。
まとめ
終身保険の解約返戻金が早期では保険料を下回るのは、保険の本質である「保障」がすでに提供されているためです。保障と貯蓄の両立を実現するには、長期的な目線で継続することが前提となります。単なる元本割れという捉え方ではなく、保障を受けたことの対価として理解することが、終身保険を上手に活用するコツです。
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