通勤中に交通事故に遭った場合、労災保険が適用されるケースが多くあります。しかし、会社や保険会社の提案によって「任意保険のみで対応」となるケースも存在します。この記事では、労災を使わず任意保険のみで進めた場合のリスクや、労災を併用したほうが良い理由を具体的に解説します。
通勤中の事故は原則として労災の対象
労働者災害補償保険(労災)は、通勤中のケガや事故も対象になります。通勤災害と認定されれば、医療費・休業補償・障害補償などの給付を受けることができます。
特に信号のない交差点での事故や、明らかに相手側の過失が大きい事故であっても、通勤中であれば労災認定されることが一般的です。
任意保険のみで処理した場合のデメリット
相手側の任意保険のみで治療費や補償を受けた場合、以下のようなデメリットがあります。
- 過失割合に応じた減額が発生し、治療費・慰謝料などが満額支給されない
- 休業補償や後遺障害補償が受けられない、または限定的になる可能性
- 通院交通費や介護費用などの細かい補償が対象外になることもある
例えば過失割合が85:15のように、被害者側にも15%の過失があるとされた場合、賠償額は15%減額されるため、実質的に損失を被ることになります。
労災保険を使うメリット
労災保険を併用することで、以下のような利点があります。
- 治療費が全額支給される(自己負担なし)
- 休業補償給付(休業4日目以降は給料の80%)が受けられる
- 後遺障害補償や介護保障なども対象
さらに、労災でカバーされない慰謝料や逸失利益などについては、相手側の任意保険で補填する「併用処理」が一般的です。
会社が労災を使いたがらない理由と対応法
一部の企業では「労災を使いたくない」と消極的な姿勢を見せることもあります。理由としては以下のようなものがあります。
- 労災が発生すると労基署への報告義務が生じる
- 企業の労災件数として記録されるため、印象が悪くなる
- 手続きが煩雑で、対応を避けたい
しかし、通勤災害は労働者の当然の権利であり、会社側が「労災を使うな」と強制することはできません。使用者責任のある場合は、会社に適切な対応を求めることが重要です。
任意保険+労災の併用が最も安心な方法
近年では「任意保険と労災の併用」が一般的です。労災で医療費や休業補償を受けつつ、慰謝料や逸失利益などは任意保険でカバーする方法です。
この方法であれば、補償漏れを最小限に抑えることができ、被害者側が不利になることは少なくなります。相手保険会社も併用を提案することが多いのはそのためです。
まとめ:労災申請は自分の権利、必要に応じて法的相談を
通勤中の事故であれば、基本的に労災申請は可能です。会社が消極的な場合でも、被害者本人の意志で申請できます。任意保険のみで対応した場合、補償が不十分になることもあるため、迷ったら社会保険労務士や労働基準監督署への相談も視野に入れましょう。
安心して治療と回復に専念するためにも、制度を理解し、最適な方法で補償を受け取ることが大切です。
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