年金は何歳まで生きれば“元が取れる”のか?損得の境目をデータで解説

年金

年金制度に対して「本当に自分は元が取れるのか?」と疑問に感じる人は少なくありません。長年支払い続ける保険料に対し、老後に受け取る年金がどのくらいでペイするのかを知ることは、ライフプラン設計の上でも大切な視点です。本記事では、年金の“元が取れる年齢”について、具体的な数字をもとに解説します。

年金の仕組みをおさらい:支払うのは保険料、受け取るのは給付

公的年金には2つの大きな柱があります。自営業者や学生も加入する国民年金(基礎年金)と、会社員や公務員が対象の厚生年金です。現役時代に保険料を納め、65歳から原則として年金を受給する仕組みです。

年金は“保険”の一種なので、「掛けた金額と戻ってくる金額」が完全に一致するわけではありません。万が一長生きした場合でも安心できる“終身保障”が最大の特徴です。

国民年金で元が取れる年齢の目安

まずは国民年金だけで見てみましょう。令和6年度時点での支給額は以下の通り。

  • 納付期間:40年間(20歳〜60歳)
  • 年間支給額:約80万円(月額約66,000円)
  • 支払総額:約960,000円 × 40年 = 約384万円(保険料月額16,000円想定)

この場合、約4年8ヶ月(384万円 ÷ 年額80万円)で元が取れる計算になります。つまり、70歳頃まで生きれば損はしないという見方ができます。

厚生年金を含めると元が取れる年齢は?

厚生年金は収入に応じて保険料と将来の年金額が変動します。以下は月収30万円の会社員が40年間加入したケースの一例です。

  • 支払総額:約7,000万円(労使折半分を含む)
  • 年間受給額:約160万円(基礎年金含む)

この場合、43年7ヶ月(7,000万円 ÷ 160万円)で元が取れるという計算になります。65歳から受給開始とすると、約108歳まで生きると支払った総額と受け取る額が釣り合います。

ただし、会社が保険料の半分を負担しているため、実質の自己負担分(約3,500万円)なら86歳前後で元が取れるイメージです。

早く亡くなったら損?年金は長生きリスクへの保険

「80歳までに亡くなったら損なのでは?」と考える方もいますが、年金制度は“長生きしたときに困らないための保険”という考え方が基本です。

実際、厚生労働省の発表によると平均寿命は女性88歳・男性82歳(2022年)で、年金の“元が取れる”年齢を超えるケースも多いです。

また、年金は受給者本人の収入だけでなく、障害年金・遺族年金などの保障機能もあるため、“保険”としての価値も忘れてはいけません。

繰り上げ・繰り下げ受給で変わる損得分岐点

年金は原則65歳支給ですが、60歳〜70歳まで受給開始時期を変更できます。

  • 繰り上げ受給(最大5年早く):1ヶ月あたり0.4%減額(60歳で開始なら24%減)
  • 繰り下げ受給(最大5年遅く):1ヶ月あたり0.7%増額(70歳で開始なら42%増)

早く受け取るほど得に見えますが、長く生きれば繰り下げのほうが得になります。繰り上げは78歳までに亡くなれば得、繰り下げは83歳以上まで生きれば得という試算もあります。

まとめ

年金の“元が取れる年齢”は制度の種類や支払い年数、収入によって異なりますが、国民年金なら70歳前後、厚生年金なら86歳前後が目安です。ただし年金は単なる投資回収ではなく、「長生きリスクをカバーする仕組み」である点を理解することが大切です。平均寿命を考えれば、実は多くの人がしっかり元を取っているとも言えるのです。

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