会社員として働きながら、自分の法人(コンサル会社など)を設立し、その法人に勤務先から報酬を支払ってもらうことを検討する人が増えています。しかし、この仕組みには就業規則、契約形態、税務リスクなど複数の注意点が存在します。この記事では、会社員が自分の法人に報酬を得る仕組みの合法性や注意点をわかりやすく解説します。
◆自分の会社に報酬を支払ってもらうことは可能か
結論から言えば、勤務先の同意があり、就業規則に反しない場合は可能です。ただし、会社員としての労働契約と、法人との業務委託契約は全く別の扱いとなるため、それぞれの契約内容と実態が問われます。
たとえば、会社員としての給与と、自分の法人に対して支払われる業務委託報酬が同一業務に基づく場合、「名ばかり委託」とみなされて税務署から否認される可能性もあります。
◆就業規則と副業・兼業のルールに注意
多くの企業では、就業規則に「副業禁止」あるいは「事前申請制」といった記載があり、これに反して自分の法人を通じた業務委託を行うと、就業規則違反として懲戒処分の対象になり得ます。
たとえば「社内システム開発の一部を自分の法人に外注する」といったケースは、社内での利益相反や不正な利益誘導と判断される可能性もあります。
◆税務リスクと社会保険の問題点
会社から自分の法人に支払われた報酬は「外注費」として処理されますが、その実態が社員業務の延長であると判断された場合、源泉徴収漏れや社会保険未加入といった問題が生じます。
税務調査では「実質的な雇用関係」があるかどうかが重視されるため、法人契約にしていても、勤務時間・業務内容・指揮命令系統が一致していると、「給与」と見なされ修正課税の対象になる恐れがあります。
◆具体例:コンサル業務としての報酬の場合
例えば、会社員としてマーケティング部門に所属していながら、自分の法人にコンサルティング費用を別途支払ってもらう場合、次の点が問われます。
- 業務内容が社内業務と明確に区別されているか
- 契約書が法人宛に締結されているか
- 自分以外の第三者にも業務委託している実態があるか
これらがクリアできていれば、外注として認められる可能性はありますが、限りなくグレーな領域である点には注意が必要です。
◆事前に確認すべき4つのチェックポイント
- 1. 就業規則に副業制限があるか
- 2. 勤務先の同意を得られているか
- 3. 契約書や請求書の整備がされているか
- 4. 実態として「独立した業務」が存在しているか
これらをクリアせずに進めてしまうと、税務署や会社とのトラブルに発展するリスクがあります。
まとめ
会社員が自分の法人に報酬を得ることは、不可能ではありませんが、就業規則・契約形態・税務実態のすべてにおいて注意が必要です。事前に会社としっかり協議し、国税庁や社会保険労務士などの専門家にも相談することで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
副業が一般化してきた現代だからこそ、法令遵守と透明性のある仕組みづくりが求められています。
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