公的年金をいつから受給するかは、老後のライフプランに大きな影響を与える重要な判断ポイントです。特に「繰り下げ受給で75歳から年金をもらって増額を狙うか」、それとも「65歳から年金を受け取り、その資金をインデックス投資に回して増やすか」という選択肢は、多くの人が将来直面するテーマと言えるでしょう。本記事では、両者のメリット・デメリットや試算例を交えながら比較していきます。
年金の繰り下げ受給とは?
公的年金の繰り下げ受給制度は、65歳以降の年金受給開始を遅らせることで、年金額を増やせる仕組みです。2022年の法改正により、受給開始を75歳まで遅らせることが可能となりました。
1ヶ月繰り下げるごとに年金が0.7%増額され、最大84%増(75歳時点)となります。例えば、年金が月12万円だった場合、75歳からの受給で約22万円に増額されるイメージです。
繰り下げの最大の魅力は「長生きリスク」への備え
繰り下げ受給の本質は、「長く生きるほど有利になる」ことにあります。仮に平均寿命よりも長く生きた場合、年金総受給額は65歳受給開始より多くなるケースが見込まれます。
【シミュレーション例】65歳開始:年金月12万円 × 20年(85歳)=約2,880万円
75歳開始:年金月22万円 × 10年(85歳)=約2,640万円
→ 85歳でようやく損益分岐点付近。90歳以上生きれば繰り下げの方が得になる計算です。
65歳から受給+インデックス投資の戦略とは?
一方、65歳から年金を受け取り、その資金を投資信託(例:S&P500や全世界株式<オルカン>)で運用すれば、複利の力で資産を大きく増やせる可能性があります。
【運用例】65歳から毎月12万円をS&P500(年平均利回り9.5%)で10年間運用した場合、単純計算で資産は約1.6~2.0倍に。これは月22万円相当の年金額に近い水準とも言えます。
ただし、市場リスクや暴落タイミングの影響もあるため、計画的な取り崩しや分散投資が前提となります。
繰り下げ vs 投資:どちらが有利か比較表で整理
項目 | 繰り下げ受給 | 65歳から投資 |
---|---|---|
開始時期 | 75歳以降 | 65歳から |
増額率 | 最大+84% | リターンは相場次第 |
リスク | 少ない(国家保証) | 市場リスクあり |
資金の流動性 | 低い(遅くまで使えない) | 高い(途中引き出し可) |
寿命への影響 | 長生き有利 | 早期死亡時も柔軟に対応可 |
このように、繰り下げは「長生き前提」の安定型、投資は「早期の資金活用と増加」を狙う攻めの選択肢と言えるでしょう。
ハイブリッド戦略も選択肢に
完全にどちらか一方を選ぶのではなく、たとえば「65歳から基礎年金だけ受給し、厚生年金は70歳以降に繰り下げる」など、部分的な繰り下げ戦略も有効です。
また、投資も一括投入ではなく、定期積立(ドルコスト平均法)で時間分散することで、リスクを抑えた運用が可能となります。
まとめ:自分のライフスタイルと寿命リスクに応じた戦略を
年金の繰り下げ受給とインデックス投資は、どちらが「絶対に得」かではなく、「どのような老後を目指すか」によって適した戦略が異なるという点に注意が必要です。
長生きを見込むなら繰り下げ、資産を柔軟に使いたいなら投資も有効。将来のライフプランや健康状態、資産状況などを見据えながら、自分に最もフィットする選択を検討しましょう。
コメント