米国の税法上、海外金融口座や資産を保有している米国納税義務者(U.S. Person)は、一定条件のもとFBAR(FinCEN Form 114)やForm 8938(FATCA)による申告義務があります。しかし、iDeCoなどの確定拠出年金口座のように、一般的な銀行口座番号が存在しない金融商品もあります。こうした場合に、申告書類上でどのように取り扱えばよいかについて解説します。
FBARとForm 8938の違いと申告対象の概要
FBAR(Foreign Bank Account Report)は、過去暦年中に合計$10,000以上を海外口座に保持した場合に義務が発生し、FinCENに提出されます。一方、Form 8938はFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)に基づき、所得税の確定申告書に添付されます。
両者とも日本の証券口座、貯金口座、退職金口座(企業型DC、iDeCoなど)を含むことがあり、それぞれ定められた金額条件を超えると報告対象になります。
確定拠出年金のような「口座番号がない口座」の記載方法
確定拠出年金(例:iDeCo)のように明確な「口座番号」が発行されない口座については、FBARやForm 8938の口座番号欄を空欄で提出しても問題ありません。ただし、次の点に注意が必要です。
- “Account number unknown”と記載する、もしくは空欄でも良いとされる。
- 金融機関名や支店所在地(可能であれば郵便番号も)は必須。
- 口座の種別は「退職金口座」「Defined Contribution Plan(確定拠出年金)」などと記載する。
Form 8938においては、「Part V – Interests in Foreign Financial Assets」に詳細を記載することになります。
iDeCoや企業型DCの具体的な記載例
以下は、Form 8938におけるiDeCo口座の記載例です。
項目 | 記載内容 |
---|---|
Type of Asset | Pension account / Defined contribution plan |
Account Number | (blank) または “Unknown” |
Financial Institution | 例:Japan Pension Service, Rakuten Securities 等 |
Maximum value during the year | その年の最高残高(円換算 → USD) |
FBARでは、”Type of account”を選択し、”Account number”は空欄もしくはUnknownとすることが認められています。
米国税務上の補足:証明書類を保管しておく
税務署やIRS(米国国税庁)に対して証明できるよう、年末残高の記載された通知書や証券会社の明細などは最低7年間は保管しておくのが望ましいです。IRSから問い合わせが来た場合に説明しやすくなります。
また、ドル換算にはその年のIRS公示レートを使用し、正確に記録を残しておきましょう。
まとめ:番号のない口座でも正しく申告できる
確定拠出年金口座のように「口座番号がない」金融資産も、適切な形式で申告することで、FBARおよびForm 8938への記載は問題ありません。記載項目が不完全であっても、重要なのは資産の存在と内容を正確に申告することです。わからない場合は、IRS公式サイトや海外税務に詳しい税理士への相談もおすすめです。
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