65歳でまとまった金融資産がある方にとって、年金の受給開始時期をどうするかは重要な判断です。特に「繰下げ受給」によって年金額が増える制度は魅力的に映りますが、本当にお得なのかは人それぞれ。この記事では、資産5000万円ある65歳の方をモデルに、年金繰下げ受給のメリット・デメリットや判断のポイントを詳しく解説します。
年金の繰下げ受給とは?
年金の繰下げ受給とは、65歳で受給を開始せずに66〜75歳まで遅らせることで、受給額を増やせる制度です。1ヶ月遅らせるごとに年金額は0.7%ずつ増額され、最大で84%アップ(75歳開始の場合)となります。
例として、65歳から年額120万円もらえる人が75歳から受け取ると、約220.8万円となります。ただし、その分、年金を受け取らない期間の生活費は自分の資産でまかなう必要があります。
資産5000万円の人にとってのメリット
65歳時点で5000万円の金融資産がある場合、生活費に困る可能性は低く、繰下げによる受給額増のメリットを十分に活用しやすくなります。
仮に生活費が年間300万円とすると、65歳から75歳までの10年間は資産で生活を維持し、75歳以降は増額された年金と残り資産で老後資金に余裕を持つことも可能です。
繰下げ受給のリスクや注意点
一方、注意すべき点もあります。最大のリスクは「寿命リスク」、つまり長生きしない場合に繰下げのメリットが薄れることです。
たとえば、75歳で年金を繰下げたものの、80歳で亡くなった場合、65歳から受け取っていた方が総受取額は多くなった可能性があります。また、医療費や介護費用が増える70代後半以降に年金がスタートするため、計画的な資金繰りが必要です。
税金や社会保険料への影響
年金額が増えると所得も増えるため、所得税や住民税、後期高齢者医療保険料、介護保険料の負担が増えることも考慮する必要があります。特に後期高齢者医療保険料は年金収入に連動して増額される可能性があるため、繰下げ後の税負担もシミュレーションしておくとよいでしょう。
実際に選ばれている繰下げ年齢は?
厚生労働省のデータによれば、繰下げ受給を選択する人は全体の1〜2%程度にとどまり、70歳まで繰下げる人が最も多くなっています。75歳まで繰下げる人はさらに少数派で、リスクを取らずに66〜70歳程度での開始を選ぶ人が増えています。
繰下げを考えている場合は、年金の受取予定額を「ねんきんネット」で確認し、自身の健康状態や資産計画と照らし合わせて判断するのが理想です。
まとめ:資産状況と健康状態がカギ
65歳時点で5000万円の資産がある方にとって、年金繰下げ受給は有力な選択肢の一つです。しかし、「何歳まで生きるか」「資産の運用・消費計画」「病気や介護の可能性」などを総合的に考慮する必要があります。
ライフプランに自信がない方は、ファイナンシャルプランナーに相談し、複数パターンの受給シミュレーションを行うことで、より安心した老後を迎えることができるでしょう。
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