「定年延長」や「再雇用制度」の普及により、70歳まで働く人が増える中、厚生年金の支払い期間が長くなるケースが増えています。一方で、60歳から年金を受け取ることができる「繰上げ受給制度」もあり、両立できるのか気になる方も多いでしょう。この記事では、70歳まで厚生年金保険料を払い続けながら、60歳から年金を受け取ることが可能かどうか、その仕組みと注意点を詳しく解説します。
年金の受給開始年齢の原則とは
公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の受給開始年齢は原則65歳ですが、60歳から70歳までの間で受給開始時期を選ぶことができます。これを「繰上げ受給」「繰下げ受給」と呼び、それぞれ年金額に増減が発生します。
たとえば、60歳から繰上げ受給すると、年金額は1か月あたり0.4%(2022年4月以降は0.4%)減額されます。60歳で受け取る場合、最大で24%減額される計算です。
70歳まで厚生年金を支払うことの意味
70歳までは、会社で働き続けて厚生年金に加入し続けることができます。つまり、給与が発生している限り保険料は支払い続けますが、その分、年金の受給額も将来的に増えます。
注意点として、70歳到達後は原則として厚生年金保険の加入義務は終了し、それ以降は保険料の支払いも終了します。
在職中の年金受給と「在職老齢年金」の制限
60歳以降も働きながら年金を受け取ることは可能ですが、「在職老齢年金制度」により、一定以上の収入があると、年金の一部または全額が支給停止になることがあります。
たとえば、60歳〜64歳の方は「基本月額(年金額÷12)+総報酬月額相当額(給与+賞与の平均)」が28万円を超えると、超えた金額の半分が支給停止の対象になります。
60歳から繰上げ受給しても保険料は払う?
60歳から老齢基礎年金や老齢厚生年金を繰上げて受け取り始めても、会社に勤めている限り、厚生年金保険料の支払い義務は継続します。つまり、「年金を受け取りながらも保険料は払う」という状況になります。
そして、保険料を払っている間も将来的に年金額の増額が行われる「年金再計算」が実施され、受給額は更新されます。
70歳まで働いた場合の年金への影響
70歳まで厚生年金に加入して働くことで、老齢厚生年金は毎年「年金額再計算」が行われて増額されます。たとえ60歳で繰上げ受給した場合でも、働いて支払った保険料分は、後から上乗せされる形で反映されるのです。
ただし、繰上げにより基本額が減っている点は変わらないため、長期的に見て損得を比較してから決断する必要があります。
まとめ:60歳から受給可能だが慎重な判断を
結論として、70歳まで厚生年金を払い続けながら、60歳から年金を繰上げ受給することは可能です。ただし、受給額の減額や在職老齢年金による停止リスク、保険料支払いとのバランスをよく理解したうえで判断することが大切です。
日本年金機構の公式サイトや、社会保険労務士・年金相談センターへの相談も活用しながら、ご自身の働き方や生活設計に合った選択をしていきましょう。
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