相続や贈与に関する税制は非常に複雑ですが、適切な理解と対策をすれば不必要な負担を避けることができます。特に「暦年贈与」と「7年ルール(生前贈与加算)」に関しては混乱しがちな部分が多く、贈与税を払ったのに再度相続税の対象になるのでは?という疑問を抱く方も少なくありません。この記事ではその仕組みを詳しく解説し、実際にどのような場合に注意が必要かを実例を交えて説明します。
暦年贈与とは?基本をおさらい
暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与の合計が110万円以下であれば、贈与税がかからないという制度です。この110万円を「基礎控除」といい、贈与を受ける人ごとに毎年適用されます。
たとえば、子ども3人にそれぞれ110万円ずつ贈与すれば、合計330万円を非課税で贈与することが可能です。
300万円贈与した場合の贈与税の仕組み
仮に1年で300万円を贈与した場合、基礎控除110万円を差し引いた190万円に対して贈与税がかかります。税率は累進制で、190万円の場合は10%(控除額10万円)ですので、贈与税額は9万円になります。
このようにして税金を払っておけば、通常は完結するはずですが、相続発生時には別のルールが適用される場合があります。それが「7年ルール(生前贈与加算)」です。
7年ルール(生前贈与加算)とは
7年ルールとは、亡くなる前の7年間に贈与された財産は、相続財産として加算されるという制度です。これにより、過去に贈与税を払っていたとしても、相続時に再び課税の対象になることがあります。
ただし、既に支払った贈与税分については相続税から差し引かれる(控除される)ため、二重に税金を払うことにはなりません。そのため、損をするというよりは、相続税の計算上「基礎控除が使いにくくなる」可能性があると理解するのが適切です。
具体例で理解する:贈与税と相続税の関係
例えば、5年前に毎年300万円を贈与し、110万円を超える部分に対して贈与税を払っていたとします。被相続人が亡くなると、5年間分の190万円×5年=950万円が、相続財産に加算されます。
相続税の課税価格を算出する際に、この950万円を上乗せして計算され、もし課税対象となれば相続税が発生します。ただし、過去に支払った贈与税(9万円×5年=45万円)は相続税額から差し引かれる仕組みです。
2024年の法改正で何が変わった?
2024年1月より、従来の「3年ルール」が「7年ルール」へと拡大されました。また、2027年以降は、相続財産に加算される贈与額は、年間110万円の控除が再度適用されるようになります(予定)。このため、将来的には一定の金額までの贈与は相続税加算の対象から外れる可能性があります。
制度は流動的なので、定期的に税理士などの専門家へ相談し、最新の情報に基づいて判断することが大切です。
節税目的の贈与は計画的に
暦年贈与による節税は有効な方法ですが、相続発生のタイミングや贈与者の健康状態によっては思わぬ課税対象になることもあります。税務署は「形式だけの贈与(名義預金)」もチェックしており、契約書や通帳の管理なども重要です。
できれば、国税庁の公式情報や、税理士への相談を通じて確実な運用を心がけましょう。
まとめ:贈与税を払っても安心できない?生前贈与は制度理解が重要
贈与税を支払っていた場合でも、相続開始から7年以内の贈与は相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。ただし、贈与税を二重に払うことにはならず、その分は相続税から控除されます。正しい制度理解と、計画的な資産移転がカギを握ります。
大きな資産移転を行う際は、専門家への相談と記録の徹底が、将来の安心と節税の鍵となるでしょう。
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