雇用保険料の過徴収があった場合の正しい返金処理と所得税・保険料の扱い方

社会保険

毎年4月や10月には雇用保険料率が変更されることがあり、給与計算の担当者にとっては注意が必要な時期です。しかし、うっかり旧料率で徴収してしまい、過徴収が発生することもあります。この記事では、雇用保険料を誤って多く徴収してしまった場合の返金方法と、返金額の所得税や雇用保険料への影響について解説します。

雇用保険料の過徴収が発生する原因とは?

雇用保険料率は年度途中で変更されることがあります。2023年度も4月に変更がありましたが、会社が誤って旧料率のまま徴収してしまうケースが報告されています。これは給与計算システムの更新忘れや、人為的ミスによって起こるものです。

例えば、2024年4月からの料率が0.6%から0.55%に引き下げられたにもかかわらず、旧料率の0.6%で計算してしまった場合、差額0.05%分が過徴収となります。

返金時の給与処理のポイント:総支給に含めるのか?

雇用保険料の過徴収分を返金する際、「給与に上乗せして返すのか」「雑収入扱いなのか」と悩む方も多いでしょう。しかし、返金はあくまでも給与から控除しすぎた金額を戻すものであり、給与所得とは別扱いとなります。

したがって、返金分は「総支給額」には含めず、「控除返金項目」など別項目で処理するのが正解です。この処理により、所得税や住民税、社会保険料の計算対象には含まれません。

返金による所得税・雇用保険料への影響

所得税については、返金額は「非課税」扱いとなるため、7月分の給与で返金してもその返金分を所得税の課税対象に含める必要はありません。税務上は誤って徴収したものを正す行為であり、追加の所得とは見なされません。

また、同じ理由で雇用保険料の再計算においても、返金分を再度保険料対象額に加算する必要はありません。あくまで過去の訂正処理であり、返金処理により新たに保険料が発生することはありません。

実務上の仕訳と明細書の記載方法

給与明細には、「雇用保険料返金」などの項目を設けて明示しましょう。返金額は「支給」ではなく「控除返金」として表示し、通常の給与支給額とは明確に区別することで、本人にも会社にも分かりやすい記録になります。

また、会計仕訳の例としては以下のように処理します。

借方 貸方 摘要
預り金(雇用保険)○○円 現金または普通預金 ○○円 雇用保険料返金

返金対象期間が複数月にわたる場合の対応

4〜6月分など複数月分の雇用保険料をまとめて返金する場合、それぞれの月ごとに返金金額を明細上で分けて記載することで透明性が高まります。特に年度途中の返金では、賞与や社会保険算定に影響しないよう配慮することも重要です。

なお、年間調整の際に過不足がなかった場合でも、返金処理は正しく行う必要があります。税務調査や従業員からの確認に備えて、記録をしっかり残しておきましょう。

まとめ:正しい返金処理で信頼を守る

雇用保険料の過徴収があった場合、返金は「給与の追加支給」ではなく「過徴収の訂正」であり、総支給額には含めず非課税で処理するのが正しい方法です。税金や保険料に影響しないよう、返金処理は慎重かつ正確に行いましょう。

給与明細や会計帳簿への明記を徹底することで、従業員からの信頼を損なうことなく、適切な事務処理を実現できます。

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