障害厚生年金(精神障害)の受給者にとって、更新のたびに「就労を始めたら等級が下がるのでは?」という不安はつきものです。とくに、障害者雇用で週に数日勤務している場合、その就労状況が年金等級にどのように影響するのかを知っておくことは重要です。本記事では、精神障害の障害厚生年金の更新時における就労と等級認定の関係を詳しく解説します。
障害厚生年金(精神)における等級とガイドラインの役割
精神の障害に関する障害厚生年金の等級認定は、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に基づいて行われます。このガイドラインでは、生活能力の程度と就労能力を総合的に判断し、1級・2級・3級の等級が決定されます。
評価は6つの領域(日常生活能力の6項目)で行われ、平均点が数値化されて「程度(1〜5)」で分類されます。たとえば、平均3.0は「程度(4)」に相当し、一定の援助があれば日常生活が可能という判定になります。
就労が等級に与える影響:週4日6時間勤務の場合
就労の有無は、生活能力とともに「社会適応能力」の一部として評価されます。ただし、就労=不支給ではありません。障害者雇用での週4日・1日6時間勤務という条件は、軽作業・配慮ありの職場環境であれば「程度(4)」のまま2級が継続されるケースも多く見られます。
特に精神障害者の就労では、「働いているか」よりも「どのような支援・配慮の下で働いているか」が重要視されます。医師の診断書にも「支援の必要性」や「就労の安定性」について具体的に記載されていることが望まれます。
ガイドライン「程度(4)」と2級判定の可能性
厚生労働省のガイドラインによれば、「程度(4)」であっても2級に該当することは可能です。その際、以下のような点が重視されます。
- 就労中でも支援が必要である
- 症状の波があり就労が不安定
- 家庭内・対人関係の援助が継続的に必要
週4日・6時間労働であっても、業務内容が単純作業であり、職場において指導や見守りが常に必要な場合は、「2級継続」となる可能性が高いと考えられます。
診断書の記載と日常生活能力の評価が鍵
就労の影響よりも重要なのが、医師が作成する診断書の内容です。とくに以下の点が強調されていると、2級維持の可能性が高まります。
- 労働は可能だが、症状が軽減したわけではない
- 職場の配慮が大きい
- 通院・服薬・支援がないと就労が困難
また、日常生活能力の6項目(食事、清潔保持、金銭管理、服薬管理、対人関係、身辺安全)について、客観的に「援助が必要」と記載されていれば、就労実態だけでは不利にはなりません。
就労しながらの年金維持に必要な工夫
実際に働きながら障害年金を受け取り続けている人は少なくありません。ポイントは、「働いている=社会的に完全に自立している」と評価されないよう、職場の支援状況や症状の変動などを丁寧に医師に伝えることです。
更新時には、厚生労働省の障害認定基準も確認し、主治医と相談の上で診断書の作成を依頼しましょう。
まとめ:就労と等級の関係は「量より質」が評価される
精神の障害厚生年金において、就労は等級判断の一要素ですが、働いているだけで2級が外れるわけではありません。週4日・1日6時間という働き方でも、「ガイドライン程度(4)・平均3.0」であり、支援が必要な状況が継続していれば、2級の継続は十分に可能です。
診断書の記載と就労環境の理解を主治医と共有し、誤解のないよう丁寧に準備することが、年金継続のカギとなります。
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