健康保険の被扶養者認定と障害年金の違い:180万円基準と障害厚生年金・基礎年金の取り扱い

社会保険

年金アドバイザーの試験や実務において、健康保険の被扶養者の要件は頻出の論点です。特に「年収180万円未満」の基準に該当するケースとして、60歳以上や一定の障害を持つ人が挙げられます。しかし、障害を持っているといっても「障害厚生年金」と「障害基礎年金」があり、この違いが健康保険の被扶養者認定に影響します。本記事ではその違いと背景をわかりやすく解説します。

健康保険の被扶養者の年収基準とは

被扶養者と認定されるためには、次の2つの条件を満たす必要があります。

  • 年間収入が130万円未満(60歳以上または一定の障害者は180万円未満)
  • 被保険者本人の収入の2分の1未満であること

ここで注目すべきは、「60歳以上」または「一定の障害者」に限り、年間収入の上限が180万円に緩和されるという点です。

「一定の障害者」とは具体的に誰のことか

この「一定の障害者」とは、健康保険法においては「障害厚生年金の受給要件を満たす程度の障害者」を意味します。具体的には、障害厚生年金の等級1級または2級に該当する程度の障害を持つ者が該当します。

つまり、障害の程度が同じであっても、「障害厚生年金」の受給資格があるかどうかが基準となるのです。これは厚生年金に加入していたかどうかが背景にあります。

障害基礎年金だけでは180万円緩和の対象外?

障害基礎年金の対象者は主に、20歳未満の障害者や、厚生年金に加入していなかった自営業者や無職の方が多いです。障害の等級が1級・2級であっても、健康保険法の解釈上、障害厚生年金の対象とならない障害基礎年金受給者は「180万円基準の緩和対象外」となります

つまり、「障害の等級が重いから180万円未満でも大丈夫」というわけではなく、その障害が厚生年金加入者に対して発生したかどうかが判断基準になります。

実例で理解:厚生年金加入歴の有無で分かれる

例1:Aさん(65歳・元会社員)が厚生年金に加入中に障害を負い、障害厚生年金2級を受給している。→年間180万円未満であれば被扶養者として認定される可能性あり。

例2:Bさん(65歳・専業主婦)が国民年金のみ加入中に障害を負い、障害基礎年金2級を受給している。→たとえ障害等級が同じでも、年収130万円未満でなければ被扶養者にはなれない。

なぜこのような違いがあるのか?制度設計の背景

健康保険制度は、原則として労働者(被保険者)の扶養を目的とする制度です。そのため、扶養対象者の判断基準も、厚生年金という「労働に基づく年金制度」との関連性を重視して設計されています。

障害基礎年金は労働とは関係のない制度設計であるため、健康保険の判断基準からは外されているのです。この違いは、年金制度の構造的な違いからくるものであり、受給資格の区別が大きく影響しているといえるでしょう。

まとめ:180万円基準は障害の程度ではなく「年金の種類」に注意

健康保険の被扶養者認定における年収基準の緩和措置は、「障害の等級」ではなく、「障害厚生年金の対象かどうか」によって判断されます。障害基礎年金の受給者であっても、厚生年金加入歴がなければ180万円基準の対象とはなりません。

制度の違いは複雑ですが、年金の種類や加入歴の違いが、被扶養者の判断や給付に大きな影響を及ぼす点を理解しておくことが重要です。

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