病気やケガで働けないときに頼れる制度の一つに「傷病手当金」があります。しかし、受給には条件があり、特に「給与が支払われないこと」という要件が混乱を招くことがあります。今回は、退職時に有給休暇をすべて消化した場合でも傷病手当金を受け取ることができるのか、その仕組みと注意点をわかりやすく解説します。
傷病手当金の基本的な受給条件とは
健康保険から支給される傷病手当金には、以下の4つの受給要件があります。
- 業務外の病気やケガで療養中である
- 就労が困難な状態である
- 連続して3日間の待期期間を経て、4日目以降も就労不能である
- その期間中に会社から給与の支払いがない
特に4つ目の「給与が支払われないこと」が受給の前提となるため、有給休暇との関係が重要になります。
有給休暇を使い切った場合の扱い
有給休暇は労働基準法に基づく労働者の権利であり、有給を消化している間は通常通り給与が支払われているとみなされます。そのため、有給休暇を使用中は傷病手当金は支給されません。
しかし、有給をすべて使い切ったあと、かつ就労不能な状態が継続していれば、その後から傷病手当金を受給することは可能です。
退職後も受給可能?在職中の状態がカギ
傷病手当金は退職後も以下の条件を満たせば受給が継続されます。
- 退職日時点で傷病手当金の支給を受けている、または受給条件を満たしていた
- 健康保険の被保険者期間が継続して1年以上ある
つまり、退職前に有給を消化し、その最終日に出勤せず「就労不能」と認定された状態が証明されれば、退職後も傷病手当金を受給できる可能性があるのです。
実例:有給を完全消化後に退職したケース
たとえば、Aさんが7月末に退職予定で、7月はすべて有給休暇を取得したとします。そして、6月下旬から病気により働けず、有給中も療養が必要な状態であった場合、このケースでは。
- 有給中は給与が支払われるため傷病手当金は出ない
- 退職日(7月31日)以降も労務不能状態が続く場合、8月1日から支給対象になる可能性あり
重要なのは「退職前に就労不能の状態にあったことを医師の診断書などで証明できること」です。
注意点と手続きに必要な書類
退職後に傷病手当金を受給する場合は、以下のような書類が求められます。
- 健康保険傷病手当金支給申請書
- 医師の診断書
- 事業主記入欄(退職前の勤務先に依頼)
また、申請は原則として事後申請なので、療養の実績があること(医師の証明)が不可欠です。
まとめ:有給消化後でも傷病手当金は受給可能。ただし条件を正確に理解しよう
退職前に有給をすべて消化していた場合でも、退職後に「就労不能状態」であれば傷病手当金の受給は可能です。ポイントは、有給中には支給対象にならず、退職後かつ就労不能であることが条件になる点です。
迷った場合は、全国健康保険協会(協会けんぽ)などに確認すると安心です。
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