厚生年金に長年加入していた人が障害厚生年金3級を受給していると、65歳以降にどの年金を受け取るのかは気になるポイントです。実は、障害年金と老齢年金の受給資格が重なる場合には、選択が必要な場面もあります。本記事では、65歳時点で障害厚生年金3級を受給している人がその後どのような年金を受け取るのかについて、制度の仕組みと具体例を交えて詳しく解説します。
障害厚生年金3級と老齢厚生年金は同時には受け取れない
原則として、65歳時点で障害厚生年金3級と老齢厚生年金の両方に受給資格がある場合、これらを同時に受け取ることはできません。どちらか一方を選択して受け取る「選択制」になります。
ただし、老齢基礎年金と障害厚生年金の組み合わせは可能であるため、障害厚生年金3級を継続しながら老齢基礎年金のみを受給することは可能です。
65歳からの選択肢:どの年金を選ぶべきか
65歳以降に受け取る年金は、以下の2通りの組み合わせが基本になります。
- ①老齢厚生年金 + 老齢基礎年金
- ②障害厚生年金3級 + 老齢基礎年金
①を選べば、障害年金の受給は終了します。②を選べば、引き続き障害厚生年金3級を受け取りながら、老齢基礎年金が加算されます。
どちらが有利かは人それぞれですが、多くの場合は①の方が受給額が高くなる傾向があります。受給見込額は「ねんきんネット」などで確認可能です。
具体例:20年間厚生年金に加入し障害厚生年金3級を受給中のケース
例として、厚生年金を20年間納めてきた方が、障害厚生年金3級を月額7万円で受給しているとします。65歳になると、老齢基礎年金(満額で月約6.5万円)と老齢厚生年金(勤務実績による)を受け取れるようになります。
仮に老齢厚生年金の受給見込額が月5万円だった場合、老齢基礎年金と合わせて月額11.5万円となり、障害厚生年金3級(月7万円)+老齢基礎年金(月6.5万円)=13.5万円を上回るため、老齢年金に切り替えた方が有利という判断になります。
手続きの注意点と確認方法
65歳になると自動的に障害年金が打ち切られるわけではなく、本人が選択の意思を示さなければ障害年金のままとなります。したがって、老齢年金への切り替えを希望する場合は年金事務所での手続きが必要です。
また、障害状態に変化があった場合や、受給額の比較を希望する場合は、事前に「年金請求書」や「年金見込額試算書」で確認しておくと安心です。迷ったら年金相談センターでの相談も活用しましょう。
繰り下げ受給や併給調整にも注意
老齢厚生年金・基礎年金は繰り下げ受給が可能で、その分受給額が増える仕組みがあります。一方、障害年金には繰り下げ制度がありません。このため、「障害年金をもらいつつ、老齢年金は繰り下げて後で増額して受け取る」という戦略も可能です。
ただし、併給制限や調整があるため、複数の制度を組み合わせる際は細かい制度設計の理解が不可欠です。
まとめ:65歳以降は「選択と比較」が鍵
障害厚生年金3級を受給している方が65歳を迎えると、老齢厚生年金との選択が発生します。どちらの年金を受給すべきかは、受給額や将来設計によって異なります。制度の違いやメリットをしっかり理解し、自分にとって最も有利な受給方法を選ぶことが重要です。迷った場合は、年金事務所での個別相談を活用するのがおすすめです。
コメント