副業や兼業が一般化する中で、複数の会社から報酬を受け取る「二以上勤務者」が増えています。その場合、社会保険の標準報酬月額は合算され、保険料の等級が上がることがあります。では、等級が上がった結果、雇用主の保険料負担はどう変わるのでしょうか?
二以上勤務者とは?
社会保険上の「二以上勤務者」とは、複数の事業所で同時に勤務し、各事業所で社会保険の適用対象となる者を指します。このような場合、届け出を行い、標準報酬月額を各事業所の報酬合計で決定します。
たとえば、A社に勤務しつつB社の役員報酬を受けるようなケースが該当します。
標準報酬月額の算定と等級の上昇
保険料の等級は、A社とB社の報酬を合算した金額で決まります。そのため、B社の役員報酬により標準報酬月額が引き上げられることがあり、結果として保険料も上がります。
この保険料の負担は各事業所で「按分(あんぶん)」されます。つまり、A社とB社の報酬割合に応じて保険料を分担する仕組みです。
A社は負担が増えるのか?
結論から言うと、A社にも負担は発生します。たとえB社の報酬増加で等級が上がったとしても、A社は「報酬割合に応じた按分額」で保険料の半分を支払う必要があります。
これは法令に基づいた仕組みであり、A社が不利益を受けているわけではなく、制度上のルールです。
被保険者本人が全額負担することはできるのか?
企業と従業員の保険料は、原則として折半です。つまり、従業員が企業の分まで自分で支払うことは、通常できません。
ただし、例外的に事業主が「従業員に全額を負担させる」契約をしていると主張するケースもありますが、これは社会保険法に違反します。労働基準監督署に相談することで、改善を促すことが可能です。
按分の仕組みを具体例で解説
例:A社の月収20万円、B社の役員報酬20万円 → 合算40万円。標準報酬月額は40万円の等級に。
この場合、A社が50%、B社が50%の報酬割合となるため、それぞれが保険料の半額ずつを負担することになります。つまり、A社も当初の20万円だけを基に保険料を計算するのではなく、40万円に対する按分負担が生じるのです。
まとめ:複数勤務による社会保険料負担は按分が基本
二以上勤務の場合、保険料は各社が報酬に応じて按分します。報酬を多く受ける会社の影響で保険料の等級が上がったとしても、他方の会社にも保険料負担は発生します。
これは被保険者が全額を負担する制度ではなく、すべての事業主が報酬の割合に応じて適切に保険料を分担するという、法律に基づいたルールです。不明点があれば社会保険労務士や年金事務所へ相談することをおすすめします。
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