交通事故に遭った際、修理費の支払いはされても「評価損」や「逸失利益」まで補償されないことがあります。このようなケースに不満や疑問を感じる方も多く、特に新車や高年式車に乗っている方にとっては大きな問題となります。今回は、自動車保険がどこまで補償してくれるのか、法的根拠や交渉の可能性まで詳しく解説します。
評価損とは?支払いの有無はどこで決まる?
評価損(格落ち損)とは、事故後に修理をしても車両の価値が下がってしまうことによる経済的損失のことです。
たとえば新車価格300万円の車が、事故で修理後に売却価値が280万円に落ちた場合、この20万円が「評価損」とされます。
ただし、評価損は保険会社による自動的な補償対象ではありません。裁判所の判断や交渉により支払いが認められるケースもありますが、相手の任意保険会社が「支払う義務はない」と主張することも少なくありません。
逸失利益とは何か?交通事故での適用例
逸失利益は、事故によって将来得られるはずだった利益を失ったことによる損失を意味します。これは人身事故においてよく用いられる概念ですが、車両事故でも間接的に議論される場合があります。
ただし、車両の逸失利益という主張は一般的ではなく、多くの場合は「評価損」として扱われるのが通例です。損害立証の難易度が高いため、実際の補償には専門家の介入が必要です。
過失割合によって補償額が決まる理由
交通事故の補償は「過失割合」に応じて分担されます。今回のケースのように「9対1」と判断された場合、あなた側が1割の過失を持つとされており、相手方の保険会社は9割分のみの修理費を支払います。
これは「相手に全額請求できるのは相手が100%悪いとき」の原則に基づいており、裁判実務でも同様の判断が多いです。
評価損を請求したいときの交渉方法
評価損の支払いを希望する場合、まずは相手方保険会社の担当者に交渉する必要があります。
その際は、第三者による査定書(中古車買取業者などの証明)や、同年式・同型式の中古車市場価格など、評価損が実在する根拠を示す資料があると交渉がスムーズです。
それでも支払いを拒否された場合は、損害保険紛争解決センターのような第三者機関に申し立てを行う手段もあります。
弁護士に相談すべきタイミング
保険会社が評価損や逸失利益の支払いを一切認めない場合、弁護士による代理交渉が有効です。特に金額が大きく、新車購入後3年未満などの場合は、裁判所で認められる可能性もあります。
弁護士費用特約が付帯している自動車保険であれば、自己負担なしで弁護士に依頼できるケースもあります。契約内容を確認してみましょう。
まとめ:評価損や逸失利益の補償は交渉次第で変わる
自動車保険の補償範囲は、契約内容と過失割合により明確に制限されています。評価損や逸失利益は原則として保険の自動支払い範囲外ですが、交渉や証拠次第で補償される余地もあります。
納得できない場合は、保険会社との交渉に加え、紛争解決機関や弁護士の活用を視野に入れましょう。正当な補償を受け取るためには、自分でも知識を持つことが大切です。
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