高年齢の方が退職した際に気になるのが、老齢厚生年金と失業給付(基本手当)の併給可否やその後の支給状況です。特に64歳で既に年金を受給している場合、退職後に失業給付を申請した場合の年金支給停止や、停止された年金が後で支給されるのかどうかについての仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
失業給付と老齢厚生年金は原則「併給不可」
64歳で特例により老齢厚生年金を受給している方が退職して失業給付を申請した場合、基本的には両方を同時に受け取ることはできません。これは「雇用保険法」と「年金制度」間で併給調整があるためで、年金の支給が一時的に「全額停止」となります。
つまり、失業給付の受給期間中は、年金が自動的に止まり、雇用保険の給付が優先される仕組みです。
停止された年金は後で受け取れるのか?
結論から言えば、「停止された期間分の年金が後で支給されることはありません」。支給停止期間中の年金は、後日まとめて支給されるわけではなく、その期間は「年金の不支給期間」としてカウントされます。
たとえば、3ヶ月間失業給付を受けた場合、その3ヶ月分の老齢厚生年金は「もらえなかった」として扱われます。
失業給付と年金の受給タイミングの選び方
65歳前の年金と失業給付の関係を理解したうえで、どちらを優先するかは慎重に選ぶ必要があります。以下のような比較が有効です。
- 失業給付の方が月額が高い → 失業給付を選択
- 年金の方が安定的に長期受給できる → 年金を継続
失業給付を優先したい場合は、ハローワークへの申請時に「年金の支給停止手続き」が必要になります。
65歳を超えるとどう変わる?
65歳を過ぎると、原則として年金は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の両方が支給される年齢となります。この時点での失業給付(高年齢求職者給付金)は「一時金」として支給される制度に変わるため、併給が可能になるケースもあります。
つまり、64歳までは併給不可、65歳以降は受給制度が変わることで「一時金+年金受給」が可能になる点は大きな違いです。
実例:64歳で退職したAさんの場合
東京都在住のAさんは、64歳で老齢厚生年金を月額9万円受給していました。会社都合で退職した後、ハローワークで失業給付(基本手当)を申請。1日あたりの基本手当日額は約6,000円で、月18万円程度受け取れる見込みとなったため、年金の支給停止を選択しました。
失業給付終了後は、再度日本年金機構に連絡して支給再開手続きを行い、翌月から年金受給を再開しましたが、停止期間中の分は支給されませんでした。
停止期間中の取り扱いに関する注意点
停止された年金は失効するわけではなく、「あくまで支給されない」だけであり、加入記録としては残ります。ただし、受給者側のアクションとして、「失業給付の終了後に速やかに支給再開手続き」を行わないと、年金支給が遅れてしまうことがあるので要注意です。
また、ハローワークと年金機構での情報連携にはタイムラグがある場合もあるため、手続き完了までは1〜2ヶ月の猶予をみておくと安心です。
まとめ:併給不可でも計画的な選択を
64歳で老齢厚生年金を受給している場合、失業給付との併給は不可であり、年金は支給停止となります。停止された年金は後日まとめて支給されるわけではないため、どちらを優先して受け取るか、退職前にしっかり検討しましょう。失業給付後は速やかな再申請で年金を再開することが重要です。
制度詳細は[参照] 日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件で確認できます。
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