業務委託から雇用契約に切り替えたときの雇用保険の扱いと注意点

社会保険

フリーランスや業務委託として働いていた方が、会社と雇用契約を結ぶ形で勤務形態が変わるケースが増えています。このときに気になるのが、社会保険や雇用保険の加入手続きで過去の勤務実態がどこまで反映されるかという点です。この記事では、業務委託から雇用契約へ切り替わった際に、社会保険の担当者に過去の勤務情報が伝わるのか、雇用保険の加入はいつからになるのかを詳しく解説します。

業務委託と雇用契約は制度上まったく別物

業務委託契約は、労働者としてではなく独立した事業者として業務を請け負う契約です。そのため、労働法上の「労働者」には該当せず、雇用保険や厚生年金、健康保険などの社会保険の適用対象外となります。

一方、雇用契約を締結した場合は、会社の指揮命令のもとに働く「労働者」とみなされるため、条件を満たせば社会保険や雇用保険の加入義務が発生します。

社会保険加入手続きに過去の業務委託歴は影響するか

結論から言えば、会社が手続きする際に社会保険の事務担当者やハローワークが、本人が過去に業務委託で働いていた事実を自動的に把握することは基本的にありません。

社会保険の適用や雇用保険の被保険者資格取得日は、雇用契約を締結した日または実際に勤務を開始した日として届出されます。業務委託期間は帳簿上「外注費」扱いであり、雇用保険や社会保険の記録に反映されません。

過去の勤務実態を伝える必要がある場合

ただし、雇用保険の受給資格や支給期間を判断する際には、過去の勤務実態が重要になるケースがあります。そのため、過去の業務委託期間に実質的に労働者として働いていた証拠(勤務表、発注書、メール記録など)を用意しておくと有利です。

例えば「形式は業務委託だったが、実質的に雇用関係だった」と主張して遡って加入させることを「遡及適用」と言い、これは個別ケースでハローワークに相談が必要です。

雇用保険の被保険者期間の計算に影響はある?

原則として、雇用保険の被保険者期間は雇用契約を結んだ日から計算されます。したがって、業務委託時代の勤務期間はカウントされません。

ただし、上述のように「形式上業務委託でも実質的に指揮命令下で働いていた」とみなされる場合には、雇用関係をさかのぼって認定される可能性もゼロではありません。これは専門家(社会保険労務士)を通じて確認すると安心です。

実際の切り替え事例と注意点

たとえばAさんは2022年4月から業務委託として毎月定額で働いていたが、2023年5月に雇用契約に切り替えたケース。この場合、雇用保険の資格取得届には「2023年5月1日付」で提出されます。

Aさんが失業給付を受けたいと考えた場合、雇用保険の被保険者期間が原則12か月以上必要となるため、業務委託期間はその条件に含まれず、不利になる可能性があります。

まとめ:切り替えたらすぐに記録を残すことが重要

業務委託から雇用契約に切り替えた場合、社会保険の記録上は新規の雇用として処理されます。過去の勤務実態は原則として自動的には反映されないため、必要に応じて証拠を整えておくことが大切です。

雇用保険の適用や将来の給付に不安がある場合は、[参照] 厚生労働省:雇用保険制度の概要やハローワークでの相談をおすすめします。

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