「別の自治体に引っ越したら、国民健康保険の滞納はチャラになるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、実際はそう簡単に“逃げ切り”できるものではありません。この記事では、転出によって国保の滞納がどう扱われるのか、法的な仕組みと現実的な対応策について解説します。
国民健康保険の滞納は「住所地」に対して発生する債務
国民健康保険(国保)は市区町村が運営する地域保険制度であり、保険料(正確には「保険税」や「保険料」)はその人が住民登録をしている自治体に納める必要があります。つまり、滞納が発生するのはその「住所地の自治体」ですが、転出しても債務そのものが消えることはありません。
たとえば、東京都A区で滞納していたとして、神奈川県B市に引っ越しても、A区が滞納分の請求権を持ち続けることになります。
転出後も督促状や催告書は届く
国保の滞納がある場合、転出先の住所へ督促状・催告書・差押予告通知などが郵送されることがあります。自治体は住民基本台帳ネットワークなどを使って新しい住所を把握することができるため、「逃げ切る」のは現実的ではありません。
また、一定期間経過後は、延滞金や財産差押(銀行口座・給与・動産等)に進むケースもあります。
法的には「時効」もあるが現実には止まる
国民健康保険料(税)には原則5年の時効が存在しますが、自治体が催告書を送付したり、納税相談に応じた場合などは「時効が中断」します。そのため、実質的にはほとんどのケースで時効消滅は起こりません。
「督促を無視し続けたら時効になる」という考えはリスクが高く、結果的に差押えなどの厳しい処分を受ける可能性が高くなります。
転出先の国保には影響しないが要注意
新しく住んだ自治体で国保に加入することは可能ですが、前住所地の滞納があるからといって、新住所で加入できないということは基本的にありません。
ただし、新しい自治体での国保加入後も、前の自治体からの請求が続くため、結果的に「二重の支払い」リスクを抱えることになります。
実例:滞納して転出したAさんのケース
大阪市で20万円ほどの国保滞納があったAさんは、東京に転出後、新生活を始めたものの、大阪市から継続的に請求が届き、放置していた結果、銀行口座が差し押さえられました。
このように、引っ越しても自治体の徴収権限は消滅せず、資産が確認されれば全国どこでも差押えは可能です。
滞納してしまった場合の現実的な対処法
国保の滞納がある場合は、以下のような対応を早めに取るのが最も現実的です。
- 分割納付の相談:収入状況に応じて月数千円単位での分割が認められることもあります
- 減免制度の確認:前年所得が低いなどの条件で保険料が減額・免除される場合があります
- 法テラスなどでの無料法律相談
相談を行うだけでも「誠意あり」と判断され、厳しい差押えのリスクが下がる可能性もあります。
まとめ|転出しても国保滞納からは逃げられない
国保の滞納は転出しても消えず、元の自治体が引き続き徴収を行う法的権利を持ち続けます。引っ越し先の自治体に影響はないとしても、滞納そのものは確実に残り続け、放置すれば延滞金や差押えに発展することも。
逃げ切りはできません。現実的な対処として、まずは滞納先の自治体に連絡し、分割払いや減免相談を行うことが最善の第一歩です。
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