社会保険の月額変更(月変)と等級の仕組みを理解しよう:残業・手当の影響とは?

社会保険

毎月の給与や手当が変動すると、社会保険料の標準報酬月額にも影響が出ます。特に「月額変更届(通称:月変)」の仕組みを理解しておくと、どのタイミングで保険料が変わるのか予測しやすくなります。今回は、定時決定(算定)と月変の違いや、等級が変動しないケースについても具体的に解説します。

月額変更届(随時改定)とは?

月額変更届は、被保険者の報酬に大きな変動があった場合に提出されるもので、「3ヶ月の平均報酬が2等級以上変動」した場合に適用されます。

具体的には、対象となる3ヶ月間(固定的賃金が変更された月の翌月から3ヶ月)の平均報酬月額をもとに、現在の標準報酬月額と比べて2等級以上の差があるときに改定されます。

2等級の差とは?20等級制との関係

厚生年金の標準報酬月額は1等級〜32等級で構成されており、2等級下がるというのはそれだけ報酬が大きく下がったことを意味します。

たとえば、標準報酬月額24等級(320,000円)だった方が、3ヶ月間の平均報酬が270,000円前後になれば、2等級下がって22等級(290,000円)になる可能性があります。ただし、保険料の上下は「等級境界の見直し」が年1回あるため、その影響も受けます。

一時的な残業代は月変対象になる?

月額変更では「恒常的な報酬変動」が対象となるため、一時的な残業代や賞与的な支払いで平均報酬が大きくなっても、会社が「恒常性がない」と判断すれば、月変の対象外になることがあります。

たとえば、7月のみ残業代が突出し、他の月より明らかに高い場合、3ヶ月平均で見ると「2等級下がるはずだったのにギリギリ変動幅に届かない」となる可能性があります。これは、残業代により平均が押し上げられたためです。

算定基礎届との違いと関係性

毎年4〜6月に提出する「算定基礎届(定時決定)」では、固定的賃金や手当、残業代の3ヶ月平均を見て新たな標準報酬月額が決まります。

一方、月変は上記の通り「報酬の変動が大きかった場合」に提出されるものです。ただし、算定と月変の提出時期が重なると、どちらか一方が採用されることになります。

このため、7月支給分で残業が多かった場合は算定対象に含まれず、月変にも影響しづらいというケースも起こり得ます。

等級が下がらない「残念なケース」とは

質問者のように、もともと標準報酬月額が2万円刻みの「等級の上限または下限ギリギリ」にいる場合、報酬が下がっても等級が変わらないことがあります。

たとえば、等級の境界が290,000円〜310,000円だった場合、報酬が295,000円→285,000円と下がっても「1等級しか変わらない」とされれば、月変は行われません。

まとめ:月変と報酬変動は計画的に確認を

社会保険の月額変更制度は一見単純に見えて、実際には「3ヶ月平均」「2等級変動」「恒常性の有無」など、複数の要素が絡みます。

一時的な残業で報酬が上がってしまうと、期待した保険料の引き下げが行われない場合がありますが、翌年の定時決定で補正される可能性もあるため、長期的視点で保険料と等級を見ていくことが重要です。

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