個人事業主として青色申告をしていても、税務調査で「雑所得」と判定されることがあります。このようなケースは、継続性や独立性などの要件を税務署側が厳しく見た結果です。この記事では、事業所得と雑所得の違いや、税務署とのやり取りで押さえるべきポイント、対応の仕方について詳しく解説します。
事業所得と雑所得の違いとは?
税法上、個人が得る収入は分類によって課税方法が異なります。事業所得と雑所得は以下のような違いがあります。
区分 | 事業所得 | 雑所得 |
---|---|---|
定義 | 営利を目的として継続的に行う事業 | 主として副業的・一時的な収入 |
経費 | 全額控除可能 | 必要経費のみ一部控除 |
赤字の取り扱い | 給与所得などと損益通算可 | 通算不可 |
たとえば、建設業として事業登録し青色申告をしていれば「事業所得」として認められるのが通常ですが、売上が低迷していたり活動実態が乏しいと判断されると、雑所得に振り分けられることがあります。
赤字が続いた場合の判断ポイント
税務署は赤字が連続していると「事業としての実態が乏しい」と判断する傾向があります。ただし、これは一概ではなく、以下のような点を総合的に見て判断されます。
- 営業活動の実態(請求書・見積書・契約書の存在)
- 専用の設備・資材倉庫などの整備
- HPや営業用SNSの有無
- 帳簿や領収書の保存・記録状況
実際に、引越しに伴い新天地での営業基盤構築に時間がかかり一時的に赤字となることは十分にありえます。その説明を記録として残しておくことが重要です。
税務署に「雑所得」と言われた場合の対処方法
税務調査で「事業ではなく雑所得」と指摘された場合も、以下のような対処を取ることで認められる可能性があります。
- 赤字の理由を明確に説明する(例:引越しや取引先の減少)
- 翌年以降の売上回復実績を提示する
- 営業経費や設備維持費の内訳を示す
- 顧問税理士がいる場合は意見書を提出
例として、2022年に88万円の売上しかなかった場合でも、その翌年に870万円、次年度に1000万円を見込んでいれば、継続的事業と判断される余地は十分にあります。
税務署とのコミュニケーションのポイント
税務署の調査官との対話は、冷静かつ根拠を持って行うことが大切です。感情的に反論するのではなく、実績データや帳簿、通帳の動きなどを根拠に理論的に説明しましょう。
また、過去に税務署へ赤字報告をしており、その際に事業所得で確定申告するよう助言された経緯があるなら、その記録や対応した職員の名前を控えておくと強い証拠になります。
確定申告の修正は慎重に
仮に税務署から正式に「雑所得」として修正申告を求められた場合には、内容を確認したうえで提出しますが、自主的に「雑所得で申告しなおす」必要はありません。
青色申告のメリット(損益通算や繰越控除)は大きいため、失うことがないよう、慎重な判断が求められます。必要であれば税理士に相談することも検討しましょう。
まとめ:実態が事業であるなら主張すべき
個人事業として長年活動し、帳簿や領収書を適正に管理している場合は、「雑所得」との指摘に対してしっかり反論する価値があります。税務署に主張すべきポイントを整理し、記録や実績と共に一貫した説明を心がけましょう。状況によっては、税理士や税務署の相談窓口を活用することも大切です。
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