なぜ輸入米が売れているのか?関税制度と消費者行動の現実を解説

家計、節約

輸入米にかけられる関税は非常に高額で、日本の農業を保護する重要な手段とされています。しかし、最近ではスーパーなどで輸入米が売れているという実態もあります。この現象は、制度の想定と現実にどのようなギャップがあるのかを浮き彫りにしています。

日本の米にかけられている関税の仕組み

日本では、WTO協定の下で米の輸入に対して「関税割当制度(ミニマムアクセス)」が採用されています。この制度では一定量の米に対しては低関税、それを超える部分には1kgあたり341円という極めて高額な関税が課されます。つまり、5kgの米には最大で1,705円の関税がかかる計算になります。

この金額設定は、「これ以上輸入しても価格競争力がなくなる」とされ、輸入抑制の目的で設計されたものです。

なぜ高関税でも輸入米が売れるのか?

一部の輸入米は、「ミニマムアクセス米」として低関税で輸入されています。これらは主に業務用や加工用に使われていましたが、最近ではその一部が小売市場にも流通しています。

また、円安の影響や国内米価の上昇により、相対的に安価な輸入米への需要が増しているという背景もあります。例えば、外食産業が使用するブレンド米や、中国・タイ産の加工米などが、消費者にとって「安い選択肢」として受け入れられているのです。

国家は関税で本当に儲かっているのか?

確かに関税収入はありますが、政府の本来の目的は「財源確保」よりも「国内農業保護」にあります。高関税は農家の収益を守る盾となっていますが、一定の関税収入が副次的に発生しているのは事実です。

ただし、輸入量は限られており、その収入は一般財源のごく一部に過ぎません。財務省の関税収入統計によると、コメに関する関税収入は他品目に比べてさほど大きくありません。

スーパーで販売される輸入米の実情

近年、業務用として輸入された米が余剰在庫として流通するケースも見られ、これが店頭に並ぶ要因の一つとなっています。また、「国産米ブレンド」として輸入米を混合することで価格を抑え、消費者のニーズに応えている商品もあります。

たとえば、あるスーパーでは「国産米7割+外国産3割」のブレンド米を10kgで2,000円台で販売しており、価格を重視する層に人気を集めています。

制度の見直しと今後の動向

農水省は今後、需給バランスの変化や国際市場の動向を踏まえて制度の柔軟化を検討する可能性があります。TPPやEPA(経済連携協定)などで低関税枠が拡大する流れもあり、「関税があるから買われない」という従来の前提が崩れつつあります。

一方で、国産米の品質やブランド力を生かした差別化戦略も進んでおり、消費者の選択肢は今後さらに広がるでしょう。

まとめ:関税制度の限界と市場の変化を見極めよう

コメの関税は、日本の農業を守る重要な制度ですが、その高額設定にもかかわらず輸入米が売れている現状は、制度と市場の力関係に変化が生じていることを示唆しています。

国家が意図的に儲けているというよりは、消費行動の変化と制度のすき間を活用したビジネスが生まれているという構図に近いといえるでしょう。

[参照]:農林水産省「米の輸入に関する制度」

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