確定拠出年金(iDeCo)は、老後資金の形成手段として非常に優れた制度ですが、受け取り方やタイミングによっては税制上のメリットが最大限に活かせないこともあります。特に60歳を迎える直前の最終年には「掛金控除」と「退職所得控除」のバランスが重要になります。本記事では、確定拠出年金の最終年の払い込みと給付時の税金の関係について、個人事業主の方にもわかりやすく解説します。
確定拠出年金の基本:掛金控除と給付時課税の仕組み
確定拠出年金では、掛金を支払っている間は所得控除の対象となり、所得税・住民税の節税になります。そして受け取り時には、一時金受取なら退職所得、年金形式なら公的年金等控除の対象となります。
つまり、拠出時に控除の恩恵を受け、受取時にも一定の非課税枠がある「税優遇型の積立制度」と言えます。
所得が低い年に掛金を払っても節税メリットが小さい理由
年間所得が低い場合、そもそも所得税や住民税があまり発生しないため、掛金を払っても控除効果が小さくなります。
たとえば、所得200万円程度であれば、基礎控除や社会保険料控除などですでに税額がかなり抑えられており、iDeCoの控除による節税インパクトは限定的となります。
60歳直前の払い込みが一時金受取の税額に与える影響
一時金で確定拠出年金を受け取る場合、「退職所得控除」が適用されます。控除額は掛金拠出年数に応じて次のように計算されます。
- 20年以下:年数×40万円
- 20年超え:800万円+(21年目以降の年数×70万円)
この控除年数には「最終年の払い込みがあるかどうか」が影響します。たとえば15年で払い込みを終了すれば退職所得控除は600万円(40万円×15年)、16年目も払えば640万円となり、控除額が40万円増えるわけです。
しかし、一方で、退職所得は(給付額−退職所得控除)÷2 の計算になるため、追加で払った掛金以上に税金負担が増えるケースもあります。
減額か継続か?判断のための比較ポイント
最終年の掛金支払いを減額または停止するかを判断するには、次のポイントを比較しましょう。
- 控除のインパクト:今の所得でどれだけの節税になるか
- 給付時の増税:控除額の増加で実際に手取りがどの程度増えるか
- 資金繰り:生活資金を圧迫してまで払い込む価値があるか
特に「預貯金を取り崩してまで払い込む」場合、そのコストに見合うメリットがあるかは慎重に見極める必要があります。
事例シミュレーション:どちらが得か?
たとえば、今年16年目の掛金84万円を払い込むと控除額は40万円増えます。しかし、退職金として受け取る総額が退職所得控除の範囲に収まる場合、その40万円分の追加控除は使われず、実質的に節税効果が出ないことになります。
しかも所得が少なければ、掛金84万円を払っても税金の還付はほぼゼロ。将来的に控除を使い切れず課税される一時金が増えるという本末転倒な結果になりかねません。
まとめ:最終年は控除と給付のバランスを見極めよう
確定拠出年金の最終年に掛金を拠出するかは、単純な「年数合わせ」ではなく、税金とのバランスが重要です。節税メリットが少なく、給付額に対する課税が増えるなら、掛金を減額または停止しても良い選択肢です。
具体的な給付額・課税額のシミュレーションを受けたい場合は、iDeCo公式サイトや、税理士・ファイナンシャルプランナーなど専門家への相談も検討しましょう。
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