会社を退職する際、「退職日」によって社会保険料の負担が変わることがあります。とくに月末退職か月中退職かで影響があるため、経営者や人事担当者が退職日を1日ずらすように提案するケースもあります。この記事では、退職日の調整がなぜ行われるのか、どういった影響があるのかを具体例を交えて解説します。
社会保険料の基本的な仕組みとは?
社会保険料(健康保険・厚生年金)は、原則として「その月の1日でも在籍していれば、その月分が徴収される」仕組みです。つまり、月の途中に退職した場合でも、1日に在籍していればその月の保険料がかかります。
例えば7月31日付で退職した場合、7月1日時点ではまだ在籍しているため、7月分の社会保険料が発生します。一方、7月30日付で退職すれば、7月1日に在籍していないため、7月分の保険料はかかりません。
退職日による社会保険料の違い:具体的な比較
次のような例で比べてみましょう。
ケースA: 7月31日付で退職 → 7月1日に在籍していたので、7月分の保険料がかかる。
ケースB: 7月30日付で退職 → 7月1日に在籍していないので、7月分の保険料は不要。
このように、たった1日の違いで会社・従業員双方の保険料負担が1ヶ月分変わることになります。これが「退職日をずらす理由」です。
会社側の本音:なぜ退職日を1日早めたいのか
会社は、従業員の退職後に支払うべき社会保険料を可能な限り抑えたいという意図があります。退職日が月末であれば、その月分の保険料を会社と従業員の双方が負担する必要がありますが、月末前に退職日を設定すれば、会社の負担もなくなるからです。
従業員からすれば、数日分働かずに済み、保険料の天引きも減る可能性があるため、必ずしも損とは限りません。
従業員にどう説明すれば納得してもらえるか?
従業員に対しては、以下のような説明が有効です。
「退職日が7月31日のままだと、7月分の健康保険・厚生年金保険料が発生してしまいます。30日付に変更すれば、その分の保険料がかからず、手取りが増える可能性があります」
また、「保険料が引かれない分、国民健康保険への加入手続きが必要ですが、保険料全体で見れば安くなる場合もあります」といった補足も必要です。
注意点:退職日の変更は本人の意思が最優先
退職日は法的には従業員と会社の合意に基づき決まるものです。会社が一方的に退職日を変更することはできません。また、無理に変更を求めると「強要」と受け取られるリスクもあります。
そのため、本人にメリットを丁寧に説明し、同意を得たうえで変更手続きを行うことが望ましい対応です。
まとめ:社会保険料と退職日の関係は丁寧な説明がカギ
退職日が1日違うだけで、社会保険料の負担が大きく変わる可能性があります。会社にとっても従業員にとっても、経済的な影響があるため、丁寧に仕組みを説明し、お互いに納得した形で退職日を決定することが重要です。実例を交えながら説明することで、従業員の理解も深まりやすくなります。
コメント