高齢の親の代わりにATMで現金を引き出すというケースは、介護や生活支援の場面で珍しくありません。しかし、たとえ親が同意していたとしても、法律や金融機関のルール上、問題が発生することがあります。本記事では、委任状がない場合でも親の口座から現金を引き出せるのか、そのリスクと代替手段について詳しく解説します。
ATMでの引き出しはカードと暗証番号があれば可能
ATMから預金を引き出す際、銀行口座のキャッシュカードと暗証番号があれば、基本的に本人確認はされません。そのため、親の同意のもとキャッシュカードと暗証番号を預かっていれば、形式上は誰でもATMで引き出しができます。
しかし、この行為には法的なリスクがあります。たとえ親が口頭で「引き出していいよ」と言ったとしても、銀行や警察がその正当性を確認できない場合、不正利用と見なされる可能性があります。
委任状なしでの引き出しが抱えるリスク
最も注意すべき点は、たとえ善意であっても「本人以外が口座を操作すること」はトラブルの原因になり得るということです。万が一、後から親族間で争いが発生した場合や、親の認知能力に疑義が生じた場合、問題が深刻化します。
例えば、親が急に認知症を発症したケースで「勝手にお金を使った」とされれば、法的トラブルに発展する可能性があります。特に金額が大きいと、横領や窃盗といった刑事事件にまで発展するリスクも否定できません。
銀行窓口での正式な手続きが推奨される理由
銀行では本人が来店できない場合、家族が代理人として手続きを行うには「委任状」や「本人確認書類」「代理人の本人確認書類」などが必要になります。これにより、取引の正当性が担保され、不正利用のリスクを防げます。
また、近年では高齢者の財産保護の観点から、代理人登録制度や成年後見制度の利用も推奨されています。特に頻繁に資金の移動がある場合は、家庭裁判所の手続きによる法定後見も検討に値します。
親の口座管理に役立つ代替手段
ATMでの引き出し以外にも、次のような方法で親の資金管理を支援することができます。
- 親名義のキャッシュカードを使った生活費の引き出しを記録に残す
- 親名義の口座と別に「生活費管理用口座」を開設し、一定額を定期的に振り替える
- オンラインバンキングの利用設定を親の了承のもとで代行する
- 弁護士や司法書士に相談し、任意後見制度の活用を検討
これらの方法は、透明性を高めると同時に、将来的なトラブルを未然に防ぐ手段となります。
実例:親の同意で引き出したが問題になったケース
ある家庭では、親の認知症が進行する前に同意のもと引き出していたにもかかわらず、後に兄弟間で相続トラブルとなり「不正にお金を使っていたのでは」と指摘された事例があります。
結果的に、取引記録やメモが残っていたことで問題は回避されましたが、こうした実例は少なくありません。特に高齢の親を持つ家庭では、記録をしっかり残すことの重要性が再認識されています。
まとめ:ATMでの引き出しは慎重に、書面の手続きが安心
親の同意があるからといって、委任状なしにATMで預金を引き出す行為は、リスクを伴う行動です。問題がなければ良いのですが、将来的に法的なトラブルに発展する可能性もあります。
安心して親の資金管理をサポートするためには、銀行窓口で正式な代理人登録を行うか、委任状を用意することが望ましいです。状況に応じて、法的な制度の活用も視野に入れましょう。
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