60歳から年金を早期受給するか遅らせるか?損得を見極める正しい考え方

年金

年金の受給開始年齢を繰り上げるか繰り下げるかは、多くの人にとって重要な選択です。特に「0.4%/月の増加=年利4.8%」という見方が本当に正しいのか、不安になる人も少なくありません。この記事では、年金受給の仕組みとその損得の考え方について、わかりやすく解説します。

年金の繰り上げ・繰り下げの仕組みとは

公的年金は原則65歳から受給開始ですが、60歳から70歳までの間で自由に受給開始時期を選べます。60歳から前倒しすると「繰り上げ受給」、66歳以降に遅らせると「繰り下げ受給」となります。

繰り下げると、1ヶ月あたり0.7%(2022年4月以降の制度)年金額が増加し、最大で84%増し(70歳まで遅らせた場合)となります。一方で繰り上げると1ヶ月あたり0.4%減額され、60歳から受給すると最大で24%減額になります。

「0.7%増×12ヶ月=年8.4%」という考え方は正しい?

一見すると「年利8.4%のリターン」と考えがちですが、これは金融商品の複利運用とは本質が異なります。年金は終身受け取れるもので、長生きすればするほど繰り下げの恩恵が大きくなります。

つまり、年金の繰り下げは「リスクのない高利回り」ではなく、「長寿という前提のもとで受給額が増える仕組み」なのです。損得は寿命に大きく左右されるのが特徴です。

繰り上げ・繰り下げの損益分岐点

繰り上げた場合と65歳からの受給を比較した「損益分岐点」は一般的に77〜78歳とされます。つまり、78歳より長生きすれば繰り下げの方が得、それ未満で亡くなれば損をすることになります。

例えば、60歳から早期受給しても78歳まで生きれば、減額分を累計で取り返すのが難しくなります。長生きリスクを考慮するなら、繰り下げも選択肢になります。

早期受給のメリットと注意点

一方で、60歳からの早期受給には「若いうちに使える」「貯金を減らさずに済む」などのメリットもあります。特に健康上の不安がある方や早期退職した方にとっては重要な選択肢です。

ただし、繰り上げによって受給額が一生減るため、長期的な生活資金には注意が必要です。医療費や介護費用など将来の出費に備えて、ライフプランを慎重に考えることが大切です。

年金は「年利で比べる」ものではない

「0.4%/月=4.8%の利回り」などと金融商品のように捉えると判断を誤ります。年金は元本の回収ではなく「終身での受給」を前提に制度設計されているため、長生きした際の保険としての機能が重視されます。

一度繰り上げ・繰り下げを選ぶと原則として変更できないため、目先の利得だけでなく、老後の支出や生活設計も踏まえて検討する必要があります。

まとめ:年金受給は「生き方」に応じた選択を

年金の繰り上げ・繰り下げは、金利や投資リターンと比較して判断するよりも、「どのように老後を生きるか」を中心に考えるべきです。重要なのは、自分の健康状態、収入・支出、家族構成を踏まえて、生活に合った受給タイミングを選ぶことです。

  • 繰り下げは月0.7%(年8.4%)増だが、寿命が前提
  • 損益分岐点は77〜78歳が目安
  • 早期受給は「若いうちの生活費確保」に有効
  • 「利回り」ではなく「長寿リスクへの備え」で考える

将来の見通しが不安な方は、FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家に相談し、自分にとって最善の選択を見つけるのがおすすめです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました