医療費が高額になった場合、日本の公的医療保険制度には「高額療養費制度」や「限度額適用認定証」といった負担軽減の仕組みがあります。しかし、これらの制度の違いや使い方について正確に理解している人は多くありません。この記事では、2つの制度の違いとそれぞれの活用法について、具体的な事例を交えてわかりやすく解説します。
高額療養費制度とは?支払ったあとに払い戻される制度
高額療養費制度とは、1か月に支払った医療費が一定額(自己負担限度額)を超えた場合、その超過分を払い戻してもらえる制度です。加入している健康保険(協会けんぽ、国民健康保険、組合健保など)を通じて申請を行います。
例えば、70歳未満で所得が標準報酬月額28万円〜50万円の方なら、自己負担限度額は約8万円+(医療費−26.7万円)×1%です。つまり、100万円の医療費がかかっても自己負担は9万円前後で済む計算になります。
限度額適用認定証とは?支払う段階で自己負担を抑える制度
限度額適用認定証は、医療機関の窓口で提示することで、その場の支払い額が自己負担限度額までに抑えられる制度です。高額療養費制度の前払い型とも言えます。
たとえば、同じく100万円の医療費がかかる場合でも、認定証があれば、最初から窓口で支払うのは9万円程度で済みます。申請は加入している健康保険組合に対して事前に行う必要があります。
制度の違いを簡単に比較
項目 | 高額療養費制度 | 限度額適用認定証 |
---|---|---|
手続き時期 | 治療後に申請 | 治療前に申請 |
自己負担 | 一旦全額支払って後で払い戻し | 最初から限度額までの支払い |
対象 | 公的保険加入者すべて | 70歳未満の方中心(70歳以上は自動適用) |
具体的な事例:入院時に認定証があると安心
例:会社員のAさん(40代)が突然の手術で10日間入院。総医療費は80万円にのぼりました。
認定証を持参した場合:支払いは限度額(例:約87,000円)のみ。
認定証なしの場合:一旦24万円以上を支払い、後日申請して払い戻し。
経済的な負担と手間を考えると、認定証の準備は非常に有効であることが分かります。
どちらも申請が必要!制度を併用することも可能
限度額適用認定証は事前に発行を申請する必要がありますが、医療費がかかったあとでも高額療養費制度の申請は可能です。
万が一認定証の手続きを忘れてしまっても、領収書を保管しておけば後から払い戻しを受けることができます。
まとめ:医療費が高額になる前に準備しておくべきポイント
限度額適用認定証と高額療養費制度は、どちらも医療費負担を軽減する重要な仕組みです。違いを簡単にまとめると以下の通りです。
- 限度額適用認定証:支払い前に申請、窓口負担を抑える
- 高額療養費制度:支払い後に申請、後日返金される
突発的な病気や入院に備え、事前に認定証の申請をしておくことをおすすめします。詳しい手続きは、加入している保険組合や自治体の窓口に確認してみてください。
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