大学生やその保護者にとって、給付型奨学金制度は経済的な大きな支えです。特に2025年度から始まる「多子世帯向けの大学無償化制度」は注目を集めていますが、制度の内容や審査基準を正しく理解しておかないと、思わぬ落とし穴に直面することがあります。本記事では、奨学金不採用の理由として多く見られる『収入超過』や『扶養の外れ』について詳しく解説します。
給付奨学金の収入条件と扶養判定の仕組み
給付型奨学金の審査では、世帯の所得状況が大きな判断材料となります。その中でも扶養控除対象であるかどうかが、支援対象か否かに関わります。103万円を超える収入があると、一般的に『税法上の扶養』から外れるとされ、世帯収入としてカウントされる可能性が高くなります。
ただし、130万円以内であれば社会保険上は扶養扱いとなることがありますが、奨学金制度では「住民税課税者=非扶養者」とみなされるケースが多く、その結果、扶養人数が減り、給付対象から外れてしまうこともあります。
なぜ98万円や103万円のラインが問題になるのか
市区町村によっては、98万円以上の所得があると住民税が課税されるため、その人は「住民税非課税者」ではなくなり、奨学金制度上の扶養親族としてカウントされなくなるのです。つまり、「103万円を超えていなければセーフ」と思っていても、「98万円を超えて課税される地域」ではアウトになる場合もあります。
また、確定申告や年末調整で「勤労学生控除」などを受けていても、制度上は住民税課税があれば「扶養扱い外」とされる可能性があり、申請時にこの点が反映されます。
「制度を知っていても対象外だった」という不条理に向き合う
今回の多子世帯向けの無償化制度について、「事前に制度が周知されていなかったため準備できなかった」「知っていても前年収入でアウトだった」といった声が多く聞かれます。特に、大学の学費を自分で稼ぎながら通う学生にとっては、「収入を得ることで給付対象から外れる」という矛盾に直面することになります。
たとえば、学費や生活費をまかなうために年間110万円稼いでいた学生が、「制度対象外」とされるのは、本来支援を受けるべき立場の学生が外れることになり、社会的にも制度設計の課題があると言えるでしょう。
代替制度や今後の支援策はあるのか?
現在の制度では、収入基準を超えた学生が対象外とされる仕組みですが、日本学生支援機構(JASSO)などでは、別の貸与型奨学金や緊急支援給付金などの制度も存在しています。
また、大学によっては独自の奨学金制度や授業料減免制度を設けている場合もあるため、大学の学生支援課に相談してみるのも有効です。
来年度以降の対策としてできること
たとえ最終学年であっても、後輩のためにも今後の対策を講じることは重要です。制度変更が行われる前に、奨学金や扶養の基準、地域ごとの住民税課税ラインを確認することが必要です。
さらに、「勤労学生控除」や「特定扶養控除」などの税制度を適用しても、奨学金審査では住民税課税の有無が最優先されるため、収入を得ながらも給付対象になりたい場合は、収入調整を意識する必要があります。
まとめ:情報のギャップが生む不公平と、今できる対策
多子世帯向けの無償化制度は、支援の意義がある一方で、「事前に制度を知らなかった」「収入基準が複雑」といった課題があります。住民税課税ラインを把握しないまま働きすぎると、制度の対象外となってしまうのが現実です。
給付奨学金の仕組みを正しく理解し、住民税や扶養基準、各種控除との関係性を把握することで、次の世代に同じ苦労をさせない知識の継承が求められています。
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