生命保険を解約して解約返戻金を受け取ると、思わぬ形で国民健康保険料が増えることがあります。今回は「解約して保険に入り直したら国保料が上がった」という事例をもとに、なぜ保険料が上がるのか、そしてどうすれば負担を軽減できるのかを詳しく解説します。
生命保険の解約返戻金は課税対象になる
まず前提として、生命保険の解約返戻金には「一時所得」として所得税が課せられます。これは、受け取った返戻金から支払った保険料の合計を引き、さらに50万円の特別控除を差し引いた金額の1/2が課税所得に加算される仕組みです。
たとえば500万円の返戻金を受け取り、それまでの支払保険料が400万円だった場合、計算式は以下のようになります。
(500万円 – 400万円 – 50万円)×1/2 = 25万円(課税所得)
この課税所得がある年の所得金額に反映され、結果的に国民健康保険料が上がる要因となります。
国民健康保険料が増える仕組み
国民健康保険料は前年の総所得金額等に基づいて算出されます。つまり、解約返戻金を受け取った翌年に、その返戻金分が反映された課税所得によって保険料が増額されるというわけです。
所得が増えれば当然、保険料も増えます。市区町村によっては所得に応じた「所得割」部分があるため、返戻金が高額になればなるほど影響も大きくなります。
保険の入り直しが影響するのはなぜか
生命保険を解約して入り直すという行為自体は違法ではありませんが、解約によって返戻金を受け取ったことで所得として扱われたことが原因です。
新たな保険に入り直しても、それは新契約としてスタートするだけで、過去の所得処理には影響を与えません。そのため、納付額が上がったあとで保険に再加入しても、保険料の増加を避けることはできません。
国民健康保険料を抑えるための対策
生命保険の解約による返戻金が高額になることが予想される場合、次のような対策が考えられます。
- 返戻金を複数年に分けて受け取る:契約内容により可能であれば、所得の分散ができる。
- 住民税非課税世帯に該当する時期を避ける:非課税になるタイミングで返戻金を受け取ると保険料増額につながる。
- 保険の解約を年明けにずらす:翌年分の保険料計算に反映されないようにタイミングを調整する。
- 税理士や市区町村の窓口に相談する:一時所得の処理が正しくされているか確認し、必要に応じて修正申告。
返戻金を一括で受け取るか、年をまたいで調整するかだけで、税負担と保険料が大きく変わる可能性があります。
具体例:1,400万円の返戻金を受け取った場合
仮に解約返戻金として500万円・500万円・400万円を同年中に受け取ったとします。この場合、合計1,400万円の返戻金から支払保険料を差し引き、そこから一時所得が算出されます。
保険料が総額1,200万円だった場合、課税対象額の計算式は以下の通りです。
(1,400万円 – 1,200万円 – 50万円)×1/2 = 75万円(課税所得)
この75万円が総所得金額に上乗せされ、翌年の国保料や住民税、介護保険料の基準に影響します。
まとめ|生命保険解約は保険料と税金に注意して行動
生命保険を解約して返戻金を受け取ると、それが一時所得として課税されるため、翌年の国民健康保険料や住民税の増加につながることがあります。保険の入り直しはその影響を回避する手段にはならず、返戻金を受け取るタイミングや金額の調整が重要になります。
高額な返戻金を受け取る前には、事前に税務署や市町村役場に相談することをおすすめします。状況に応じて計画的に解約・再契約を行い、無理のない納税と保険料の管理を目指しましょう。
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