建設業で労災保険に加入する際、請負金額をもとに保険料を計算しますが、「どの工事が対象になるのか?」といった疑問を持つ方は少なくありません。この記事では、元請・下請けそれぞれの立場における申告の可否や材料手配のみのケースなど、現場でよくある悩みを具体的に整理して解説します。
労災保険における「計算対象工事」とは?
労災保険(特別加入を含む)の保険料は、原則として建設工事における請負金額に応じて算定されます。この請負金額には、労務の提供(作業)の対価が含まれている必要があります。
そのため、単に材料を供給しただけ、もしくは施工に直接関与していない場合は、労災保険の対象となる「請負工事」とはみなされません。
元請けではなく1次下請けとして受注した工事は申告する?
結論から言えば、自社が「労務を提供した工事」であれば、元請けでなくても保険料申告の対象になります。つまり、下請けとして受注して施工した工事でも、労働者を使って現場に従事したのであれば、労災保険の計算に含める必要があります。
よくある誤解として、「労災は元請けのものだから、自分は不要」と考えてしまうことがありますが、自社の従業員が現場に入っている限り、たとえ下請けでも労災の対象です。
元請けだけど材料手配だけしたケースはどうなる?
たとえば、自社が元請け契約を結んでいても、施工は発注者側が行い、自社は材料の供給のみを行った場合、労務提供が伴っていないため、これは労災保険の対象とはなりません。
この場合、請負金額に含まれるのは「物品販売」に近い内容となり、労災保険に申告する必要も義務もないと考えて差し支えありません。
労災保険の請負金額に含めるもの・含めないもの
含めるもの | 含めないもの |
---|---|
作業員の人件費 | 材料代のみ |
施工費用(下請費含む) | 設計料・管理料のみ |
現場搬入や運搬に関わる費用 | 施主施工部分 |
契約書や見積書に明確な区分がある場合は、それをもとに判断することが重要です。
よくある実務トラブルと注意点
下請けとして複数の元請けから仕事を受けている場合、それぞれの工事ごとに「労務を提供したか」を明確にしておくことが、労災の申告トラブルを避けるポイントです。
また、申告忘れや、対象外なのに含めてしまうことで、過大請求や監査指摘を受けるケースもありますので、帳簿や契約書の整理を徹底しましょう。
まとめ:元請・下請かどうかよりも「労務の提供」がカギ
労災保険の保険料申告では、自社が施工に関与したかどうか、つまり労務の提供があったかが最大のポイントです。下請けでも作業していれば申告対象ですが、材料のみ供給であれば対象外です。契約内容や実態を正確に把握し、適切な保険料計算を行いましょう。
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