届け出印・実印の偽造は犯罪になる?自分の印鑑でも無罪とは限らない理由

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銀行や役所に登録している届け出印や実印は、法的にも重要な意味を持つ印鑑です。そのため、たとえ自分名義のものであっても、印鑑の偽造や不正使用は重大な法的問題を引き起こす可能性があります。この記事では、「自分の印鑑を偽造した場合に罪に問われるのか?」というテーマについて、刑法や民事の観点から詳しく解説します。

そもそも「偽造」とは何か?

「偽造」とは、他人を欺く目的で、真正な印影や署名に似せて無断で作成する行為を指します。印鑑に関しては、自分の名前であっても、正式に登録された印章でなければ、法的効力においては別物とみなされることもあります。

たとえば、印鑑証明を取得している実印を偽って別の印鑑で文書に押印した場合、それが契約書などの重要書類であれば私文書偽造罪に問われる可能性が出てきます。

自分の印鑑を勝手に作った場合も「偽造」になる?

重要なのは「行為の目的」と「文書の用途」です。自分の実印や届け出印と類似の印影を別途作成し、第三者との契約書類や金融機関への申請書に使用すれば、「文書の真正性を偽った」とされ、刑法第159条「私文書偽造罪」に該当するおそれがあります。

つまり、「自分の名前だから問題ない」とは限らず、印影が登録されたものと異なり、実際には登録していない印であるならば、その効力や信用を不正に利用したとみなされる場合があるのです。

金融機関に対する届け出印の偽造とそのリスク

銀行口座を持っている場合、預金引き出しや契約変更などの手続きにおいて届け出印を使用します。仮に本人が「類似した印鑑」を勝手に使って手続きをした場合でも、銀行側を欺いて処理を進めたことになり、不正行為として民事・刑事の責任を問われる可能性があります。

また、第三者が関与していた場合(たとえば家族が本人に無断で印鑑を作り書類に押印した場合)には、より明確に文書偽造や詐欺の構成要件に該当することになります。

実際にあった印鑑偽造を巡る判例

過去の判例では、「本人の名義の印鑑を模倣して勝手に契約書に使用し、不正な融資を受けたケース」において、懲役刑の実刑判決が出された事例もあります。これは、自分の名前であっても「登録されていない印影」であり、他人や組織を欺く意図があったと認定されたためです。

他にも、実印を勝手に作り、不動産の売買契約に使用したケースでは、「文書偽造・同行使罪」が適用され、刑事責任を問われた例もあります。

「自分のものならOK」は通用しない時代

デジタル署名や電子印の導入が進む現在でも、実印や届け出印の信用性は根強く残っています。そのため、本人が自分名義の印鑑を勝手に複製し使用しても、悪用の意図や不正な目的があれば法的責任を免れません

たとえば、破産回避や債務逃れを目的に印影を偽造して契約書を捏造すれば、相手方や金融機関に損害を与える結果となり、詐欺罪などにも発展する可能性があります。

まとめ:印鑑の偽造は自分のものでも要注意

届け出印や実印を本人が偽造した場合でも、その使用目的や状況によっては、刑法上の偽造罪や詐欺罪に問われる可能性があります。法律上、「自分の名前=自由に扱える」とは限らず、「正規に登録された印影」でなければ正式な証明とは認められないのです。

安易な印鑑の再作成や不正使用は、信用の失墜だけでなく法的責任も伴うため、慎重に扱うことが求められます。

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