事実婚状態で扶養に入るはずが、会社の手続きミスによって国民年金の未加入状態となり、後から督促が届いたというケースは決して珍しくありません。この記事では、そのような場合に会社へ損失を請求できるのか、また法的根拠や対応策について解説します。
扶養手続きの重要性と企業の義務
健康保険および厚生年金における「扶養」は、労働者の被扶養者として認定されれば、国民年金保険料や健康保険料の支払いが免除される重要な制度です。手続きは通常、勤務先の総務や人事部門を通じて行われ、会社が事務処理を担います。
企業は、従業員の社会保険手続きについて一定の義務と責任を負っています。会社側の事務ミスによって扶養に入れなかった場合、それにより発生した不利益(例えば、国民年金の自己負担など)について責任を問える可能性があります。
会社の手続きミスによる損害賠償請求の可否
日本の民法では、企業が従業員やその家族に対して「不法行為」または「債務不履行」を理由に損害を与えた場合、損害賠償を請求することが可能です(民法709条および415条)。
今回のケースでは、会社が扶養手続きの案内を行いながら、その前提となる社会保険加入を怠っていたため、本人の信頼に基づいた行動(扶養に入れる前提で国民年金未加入)が損なわれたと判断できます。
具体的に請求できる範囲と方法
支払うことになった国民年金保険料(1月〜5月分)を、会社が「全額負担する」と明言している場合、その旨を文書またはメールで残しておくことが重要です。口頭のみの約束では、後にトラブルになるリスクがあります。
会社に請求する際には、次のような書類を準備しましょう。
- 国民年金の請求書(日本年金機構から届いたもの)
- 会社とのメールやメモ(扶養手続きミスを認めた証拠)
- 振込先の口座情報
扶養に入っていた証拠はあるか
扶養に入るための書類を提出したという事実は重要です。そのコピーがある場合は保存しておきましょう。また、社会保険組合に対して「被扶養者としての登録がされていたかどうか」を確認し、万一、未手続きであってもその責任が会社にあると裏付けられる場合、請求の正当性が高まります。
事実婚であっても、同一世帯で生活を共にしていることが証明できれば扶養対象になります。
万が一、会社が支払わない場合の対応
会社が費用の負担を渋ったり支払いに応じない場合は、以下の方法を検討してください。
- 労働基準監督署に相談
- 消費生活センターや国民生活センターに相談
- 弁護士の無料相談窓口や法テラスを利用
こうした窓口を活用することで、交渉や法的対応をスムーズに進めることができます。
まとめ
会社の社会保険手続きミスによって発生した国民年金保険料の支払いは、原則として会社に請求可能です。民法上の「債務不履行」や「不法行為」に該当する可能性が高く、会社が自ら認めているのであれば、支払いに応じさせることは十分に現実的です。
大切なのは、やり取りの証拠をきちんと残すことと、支払義務の根拠を明確に伝えること。万が一支払いを拒否された場合でも、第三者機関への相談で解決の糸口が見えてきます。
コメント