銀行員は本当に一円のズレも許されない？現場の実態と業務の仕組みを解説

「銀行では一円でも合わなければ帰れない」と耳にすることがありますが、これは単なる都市伝説ではありません。実際の銀行業務では、金額の誤差が重大な問題につながるため、厳密な管理体制が敷かれています。本記事では、銀行の締め作業の裏側や、なぜそこまで厳格な管理が求められるのかを詳しく見ていきます。

なぜ「1円のズレ」も許されないのか？

銀行業務では、取り扱う金額が小口から億単位まで多岐に渡ります。そのため、わずかな誤差でも顧客の信頼を損ねたり、不正の発見が遅れたりするリスクがあります。

例えば、ATMの現金残高と帳簿の金額が一致しない場合、その差額が1円でも、原因が「入力ミス」か「不正」か判断する必要があります。銀行は極めて厳格なコンプライアンスの下で運営されているため、この確認作業が徹底されています。

現役銀行員や元行員によると、実際に「帰れなかった」ケースはあるとのこと。ただし、毎日ではなく、ズレが見つかった日だけ。チーム全員で原因を突き止めるため、業務終了後に残業が発生することがあります。

ある元銀行員の声では、「現金が合わないと、閉店後に1時間以上かけてATMや帳簿を突き合わせて調査した」との証言もあります。

銀行では、1日の営業終了後に現金勘定や伝票の整合性を確認する「締め作業」が行われます。この際、『現金出納帳』『日計表』『金庫残高』『ATM現金』などを照合します。

金額が一致しなければ、現場責任者を交えてトリプルチェックや再点検を実施し、原因を突き止めるまで帰宅できないケースもあります。

どうしてもズレの原因が不明な場合、一旦「仮計上」して翌営業日に再確認する手法もあります。このとき、監査や本部に報告が必要になるため、手続きは煩雑で精神的負担も大きいです。

ただし、「帰れない」よりも「原因を突き止めること」が重要視されており、無理に残業を強いられるわけではない銀行も増えています。

近年のキャッシュレス推進により、現金取り扱い量は減少傾向にあります。そのため、金額ズレの頻度や時間外業務も徐々に減っているのが現実です。

また、AIによる帳簿チェックや監査支援ツールの導入が進み、人為的ミスの発見もスピードアップしています。

「1円でも合わないと帰れない」というのは一部では事実ですが、必ずしも毎日全員がそうというわけではありません。現金の扱いにおける責任が重いため、慎重な管理が求められているのです。

ただし、最近ではキャッシュレスやITの導入によって業務効率化が進み、銀行業務の現場も着実に働きやすくなっているのが実情です。