高齢化が進む日本社会において、65歳以上の高齢者の資産状況は老後の生活や経済全体にも大きな影響を与える要素となっています。最近では「65歳以上の5人に1人が金融資産4,000万円以上を保有している」という調査結果も話題になりました。本記事では、その統計データの背景と実態、そしてなぜそれほどの資産を築けたのか、また全体像としてのバランスについて詳しく解説します。
65歳以上の高齢者の資産状況:4,000万円以上は本当に20%?
野村総合研究所や金融広報中央委員会のデータなどを基にした報道によると、65歳以上の高齢者の中で金融資産が4,000万円以上の世帯は全体の約20%に上るという分析があります。
これはあくまでも「金融資産」であり、預貯金・株式・投資信託・保険などの評価額を合計したもので、土地や住宅などの不動産は含まれていません。
統計の見方と「中央値」と「平均値」の違いに注意
平均値では高資産者に引っ張られ数値が高くなる傾向があります。一方、中央値(全体のちょうど真ん中の人の資産額)では、実際の生活実態がより正確にわかります。
例えば高齢世帯(65歳以上)の金融資産の中央値は、1,200万円前後と言われており、これは「4,000万円以上が当たり前」という印象とは異なることがわかります。
上場企業社員・中小企業経営者・公務員などの属性別傾向
上場企業社員:約350万人、公務員:約350万人、中小企業の経営者も約340万人とされています。このような比較的安定的・高所得の職に就いていた層は退職金や企業年金なども含め、金融資産を築きやすかった傾向にあります。
しかし、それ以外の非正規雇用や自営業者、高齢の単身者世帯では資産形成が難しく、生活保護や年金に依存するケースも少なくありません。
公立学校のクラスに当てはめると?イメージで理解する
仮にクラス45人の中で9人が「4,000万円以上の資産を持つ」と想像すると、その割合の大きさが実感できます。しかしこれは全国平均であり、都市部と地方、持ち家と賃貸、単身と夫婦世帯などで状況は大きく異なります。
なぜ資産格差が広がるのか?
・団塊世代は高度経済成長期に就職・昇進し、住宅購入も相対的に容易だった時代を経験
・退職金制度や企業年金が厚かった企業が多かった
・年功序列型賃金で長期勤務者が得をする仕組みが機能していた
一方、現代の若年層は非正規雇用・賃金停滞・社会保険料の増加という条件下での生活であり、資産形成が難しいのが現実です。
まとめ:データはあくまで一側面、個々の状況を正しく把握しよう
「65歳以上の20%が金融資産4,000万円以上」という数字はインパクトがありますが、それがすべての高齢者の生活水準を表すわけではありません。平均と中央値の違い、都市部と地方の格差、雇用形態の違いなど、複数の要素を考慮することが重要です。将来の資産形成や老後資金の準備を考えるうえでも、現実的な視点を持って計画を立てることが大切です。
[参照] Yahoo!ニュース – 65歳以上の20%が資産4,000万円以上?
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